堀君は頭が良すぎる故に損をしてしまった【河野高志の「つまらなかったら寝ちゃうよ」Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 12/1 第2試合】

「RMUの覇王」河野高志が、Mリーグの対局をチェック!

河野の目には、劇的なオーラスの展開や対局のポイントはどのように映っていたのか?

【取材・構成:東川亮】

■一瞬の得を取ろうとした弊害

第1試合も途中から見たんですけど、堀君というか、サクラナイツが不調なんだな、という感じがしましたね。最後のオーラスから行きますけど、堀君に学歴としての頭の良さがあるかは僕は分からないけど、同じ対局のときに空いている時間で話をしている分に関して言うと、麻雀IQは高いと思っているんですよ。なおかつ僕に対しての接し方も含めて、人間性もいいなと思っているんですね。そういう意味で評価しているんです。

で、オーラスの彼にできることは3着を取ることだけだったじゃないですか。そこで頭が良すぎるが故に、素点12000点プラスアルファを損しちゃう打牌をしちゃっているんですね。形式テンパイに行って、なおかつわざとカンして誰かがツモってくれたときに本田君と入れ替わることまで考え、さらにテンパイノーテンで3着に上がれるというのも考え、新ドラにした【7ソウ】で多井にハネ満を打つっていうのは、通常の麻雀プロだとあり得ないと思うんですよ。頭が良すぎちゃって今現在の得をするところだけを考えちゃっているところがあって、そういうところに現状のサクラナイツの不調があるんじゃないかと思っていますね。

せっかく第1戦でいいトップを取って、2戦目であのラスはちょっと本人もキツいだろうね。頭のいい人って、最善の策を採って点数がなくなる、着順が落ちるのは仕方ないと考えている人もいますけど、麻雀ってそれだけじゃないような気がしました。

僕らの年代の麻雀プロって、「諦めるのも麻雀だ」というふうに僕はやってきているんですよ。だからあの形式テンパイを取りに行っているかと言えば、行ってないんですよね。運気があれば、たとえば多井とかが満貫やハネ満をツモって本田君をラスにしてくれると思っているので、あの形式テンパイの仕掛け、そこからのカン、そして最後の放銃は、僕はしないんです。それに対して思った感想が今の話です。麻雀頭脳が良すぎるのと、一瞬の得を取るというのを今の若い子たちはしていて、堀君はそんなに若くないけど、それの弊害、悪いところが出たんじゃないかなと。

当然、いいときもあるんですよ。麻雀って成功もあれば裏目もあるんで。今回は裏目が出ちゃったなと思いました。

■多井の意志を感じた一打

あのオーラスでビックリしたのは多井の8巡目の【3マン】切りですね。【赤5マン】を持ってきてメンタンピン赤、さらにドラ【5ソウ】の2枚引きや赤【赤5ソウ】引き、もしくはそこの待ちにしてハネ満をツモりに行こうという、あそこはものすごく意志を感じました。実際【5ソウ】も生きてたし、あの2度受けをマックス引いてくることを考えてやっているのはちょっとビックリしましたね。そこに堀君のカンで【7ソウ】が新ドラになって、今回のオーラスは見せ場があったと思います。

このオーラスは面白かったね。本田君もギリギリまでテンパイを取りに行って、多井のカン【3ソウ】を引いてテンパイも取ってるし、1本場に面白いドラマがあって、やっぱりつながるんだなと思って見てました。

多井のカン【3ソウ】リーチは簡単なんですよ。【2ソウ】が3枚見えてるんでカン【3ソウ】に感触があったのと、本田と堀をストップさせないと、もう1枚切られるとリーチをかけられなくなるんですね。あのときは場ゼロで茅森に2枚、山に2枚だったんですけど、それが1枚切られて、合わせられて1枚切られたら勝負に行けなくなるので、ここは勝負だって行ったんだと思うんですよ。それで本田も【3ソウ】を入れて、オーラス1本場のドラマがあったんじゃないかと思いました。

■多井の手バラ鳴きが増えている気がする

多井がね、チーム成績の問題なのか自分の成績が今までみたいにいい状態じゃないからなのか、親のときに、手バラで翻牌鳴きが増えている気がするんですよ。東1局は翻牌2つあって700オールをツモっているんですけど、あれを1鳴きしない手もあります。

それで、南1局ですよね。ドラが【8ピン】のときに手バラで仕掛けていって、本田君にカン【5マン】を一発でツモられて親かぶりするんですけど、そこに因果関係があるかどうかは置いておいて、そういう仕掛けをしたときにアガれないどころか、親かぶりとかをまあまあしているような気がするんです。本田君のカン【5マン】は自分から【4マン】が2枚見えているのと、赤があるんで、それで行ったと思うんですけど。

あとは南2局、本田君が【1ソウ】【2ソウ】【4ソウ】【4ソウ】【赤5ソウ】【7ソウ】【8ソウ】、ドラ【7ソウ】という局で【1ソウ】を切ったんですけど、【4ソウ】切りのほうが良かったような気がしました。一気通貫残しと、危険度も含めて。

■茅森から伝わる、フェニックスの運気上昇

あとは茅森ですね。後半に手が入って、素晴らしいアガリが連続したじゃないですか。それの序章として、東2局3本場で、茅森が仕掛けていったんです。最終的に【4マン】【7マン】になって、多井も【4マン】【7マン】で追っかけて流局しちゃったんですけど、これ、展開がまた変わっていた可能性があったんですよ。

なんでかというと、茅森が【2ピン】【2ピン】【4ピン】【赤5ピン】【5ピン】というところで、スジを4枚持っているのが怖くなっちゃって、【5ピン】を先切りしちゃったんです。茅森の【5ピン】がなくても多井が【5ピン】を切っているんで、それをポンしていると周りにいく牌が変わっていて、もっと早く茅森がアガっていたかもしれないし、多井がリーチをかけて2人テンパイということもなかったと思うんですよね。ここもこの試合のあやだったような気がします。

あとは東4局ですか。本田がよくチートイツをテンパったなと。テンパっただけでもすごいのに【6ソウ】単騎でリーチに行って、これは結果として【6ソウ】3枚いたけど、僕はあれはリーチしないんですよ。いわゆるチートイツとしていい待ちにしたいんですね。たとえば1枚切れの字牌だったり、自分のスジにかかっている、4を切っている1だとか6を切っている9だとか、そういうチートイツとしてある程度自信があるリーチを僕は選択しがちなので、あの本田のリーチって何回か見ているんですけど、思い切りがいいですよね。

結果3枚生きていたのはただの偶然だし、追っかけリーチの茅森にリーチ一発表3裏3を打ったのもただの偶然なんですけど、その偶然のなかで茅森はよくアガれたなと。昨シーズンの優勝チームのフェニックスは序盤調子が悪くて最下位だったけど、ここに来て上がってきているのは、そういうところがアガれてきているからで、調子が上がってきている、運気が上がってきているとなと思いました。そこは見ていて素晴らしいなと思いました。

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