松本にドラポンの仕掛けが入り、場に緊張感が走ったのであった。
だがしかし、東城もそこまでは想定範囲内。
自身は打点もスピードも真っ向勝負できる形な筈…
だった。
何と東城にも神様からのイタズラが舞い降りてしまう。
それは、ツモによる単騎テンパイであった。
その目の前の現象に一瞬、曇った表情を見せたが
しかし次巡、東城の右手によって手繰り寄せられたのは… であった。
それは… つまり
“裏目”
と言わざるを得ない。
更に追い討ちを掛けたのが…
松本に危険牌のとを入れ替えるとすぐに
さっきまで喉から手が出るほど欲しかったが瀬戸熊から溢れたのであった。
もちろん瀬戸熊も東城のが無かったのならば違う選択肢になっていたかもしれない。ただ、目を細め口元に悔しさが込み上げる表情の東城には現時点でその答えは分からないのである。
もしかして
“裏目”
だったのかも…。
結果的には
松本から出アガリ1,300となるが…
“偶然という名の必然”
があるのならばこの手はヤミテン1,300の出アガリでは無く、リーチという未来への暗示だったのかもしれない。
東城はこの試合大きなミスがないどころか
南3局には
美しい手順で、あと一歩のテンパイにより松本を追い詰めていた。
それでも、決勝卓への最後の勝ち上がり切符を手に入れたのは
松本吉弘という漢。
それは偶然の連なりが導いた必然の結末だったのだろうか。
その答えが見えないからこそ、私達は麻雀に魅了されるのかもしれない。
B卓の勝ち上がりアンケートでは圧倒的な人気投票を勝ち取った東城りお。
多くのファンからの期待に応えられなかったその瞳の眼差しの奥には、悔しさと誓いが宿っていた。
また“リベンジ”したいと…。
来年
再びこの舞台に戻って来られるか。
東城りおの最強戦の道はこの瞬間、新たに開かれたのであった。