あの時たろう選手が安全度のより高いをツモ切り、なぜ歯を喰いしばってを残していたのか
草むらに身を潜めて息を殺していたその理由は、相手を突き刺す鋭い角を隠し持っていたからでした。
急所のを引き出し、大きなリードを築いたたろう選手は
二番手仲林選手の親を軽く流し、今シーズン初トップへ向けて順調に局を進めていましたが
一撃で乱暴に、簡単にひっくり返してくる仲林選手。
ハネマンを親被り「毎回どうなってんのよ麻雀」と苦笑いのたろう選手でしたが
もう一回トップを目指して最善手を選ぶだけと、気持ちをリセットしていました。
次局、終盤に待ちでリーチをかけると
中田選手から打たれる。
ロンをした場合、裏ドラ1枚乗っても仲林選手には届かず2着目でオーラスに突入。
それよりも親の連荘や、テンパイ・ノーテンで点差を詰めたほうがトップになる確率は高いと
を見逃し。
中田選手との2人テンパイで流局。
この見逃しに痺れたのは仲林選手。
ロンをしてくれていたら裏無しで3,000点差のところ、見逃しでノーテン罰符を払わされたため、2,600点差で1本場供託1本も残してのオーラスを迎えることになりました。
麻雀に神様がいるのならば、そろそろたろう選手に幸運を与えても良さそうな展開でしたが
好配牌が渡されたのはリードしていた仲林選手。
一方、たろう選手は8種8牌と圧倒的な戦力差。
この奈落に突き落とされそうな絶望的な状況を目の前にしても顔色一つ変えないのがゼウスで
「前局の見逃しが効いて、この手は役牌重ねるだけでOKになった」と、崖の淵にギリギリかかっていた小指に力が湧いていました。
だいぶ先を進んでいた仲林選手に
一歩ずつ
また一歩ずつ
役牌を重ね、その背後に近づくたろう選手。
先にテンパイが入ったのは仲林選手でしたが
充分形で追いついたたろう選手が差し切って、再逆転での今シーズン初トップとなりました。
約1年ぶりのトップに熱いものが込み上げ、天を見上げるたろう選手。
1回のトップがこんなにも嬉しいものなのかと、噛みしめているようでした。
試合後のインタビューでは「あの1,300点の見逃しは敵ながら見事でした」と讃える仲林選手に対し
「あれ点パネしてたから1,600点だよ」と思いながらも、まだ仲林選手の喋るターンなので我慢するたろう選手。すぐに喋り出してしまう園田選手との違いが印象的でした。
日本プロ麻雀連盟所属16年目。
一日中麻雀観るか野球観るか漫画読むかして、たまに寝る。
Twitter:@koshishi0610