やはり簡単にはトップを取らせてくれない。
残り2局が、永遠のようにすら感じられる。
菅原は祈る。どうか流局してくれることを。
菅原の祈りが届いたか、ここは流局で事なきを得る。
が、その伊達の開かれた手を見て肝を冷やしただろう。
南3局1本場
「ポン」
今度こそ、菅原が役牌を1枚目から鳴いていった。
愚形は残っているが、アガリがくっきりと見える。
やはり、自分で決めなくてはいけない。弱気になっていた心を、もう一度奮い立たせて。
自力で、トップを大きく近付けるアガリをもぎ取った。
そのアガリ形は、奇しくもあのリーチのみの時と同じ、ペンだった。
オーラスは、太が3着をキープするアガリを決めて、菅原の今期3勝目となった。
苦しいチームに、大きな意味をもたらすトップ。
特に南2局でのペンーチのみの判断はお見事だった。
ご存知の方も多いと思うが、菅原は今シーズンの開幕前に行われたビーストのオーディションで勝ち抜き、このMリーグの舞台へと足を踏み入れた。
Mリーガーになれる椅子を争っていたあの時、菅原の表情には鬼気迫る何かを感じた。
歴戦の猛者達を前にしても、菅原は堂々と自分の麻雀を打ち切っていた。
あの日の涙を、負けた者達の想いを、そして、ファンからの応援を胸に。
これからも強気で戦って欲しいと心から思う。
チームの現状はもちろん苦しい。それでも――
まだ諦めるには、早すぎるはずだ。
最高位戦日本プロ麻雀協会47期前期入会。麻雀プロ兼作家。
麻雀の面白さと、リアルな熱量を多くの人に伝えるため幅広く活動中。
Twitter:@Kotetsu_0924