HIRO君はトップだからいい、じゃないんだよ。オーラスはぬるい!【沢崎誠の「マムシの目」Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 12/2 第1試合】

KADOKAWAサクラナイツ「マムシの沢崎」こと沢崎誠

「面白いメンバーだな」と思ったという12月2日の第1試合で、思わず言いたくなったこととは?

【取材・構成:東川亮】

■HIRO柴田が苦戦している理由

この日の1試合目はすごくいいメンバーだったよね。ただ、1試合目でトップになったHIRO柴田君、麻雀がまだちょっと粗いよね。力があるのは間違いないんだけど、Mリーグが始まる前から勝つような、いろいろなことを言っていたのよね。今はそれを言っていたツケが来ている感じだよね。勝って当たり前じゃなしに、もちろんその気持ちは大事なんだけど、連盟の試合とMリーグの試合は別個のもんだから、連盟で力があろうとMリーグでは初心者なわけよ、1年目だからね。それを1試合もやる前から「勝ちます」とか言っていたら、負けているときにひどいよね。戻すのがすごい大変、それは精神的にもね。それはもう、ずっと気になっていた。

僕は始まる前に「今年のHIRO君は危ないね」と言っていたのね。他にも2人くらい挙げたけど、苦労するのは分かっていたから。HIRO君の場合には、自分で自分の脚を引っ張ってしまった。「勝ちます」っていうい表現は、僕なんかは若い人にはすごくしてほしいんだけど、初めてのMリーグで言うことじゃないんだよね。たとえば連盟だったら、鳳凰戦、十段戦、いろいろあるじゃない。彼は鳳凰位を獲っているし、他にもタイトルを獲っているから、他のもので「頑張って優勝します」というのは分かるし、「勝ってくれよな」とか思うんだけど、Mリーグは別個のものだから。個人戦だけど個人戦じゃないのよ。それを安易に言っちゃったから、ファンが負けることに納得しなくなるわけよ。

強いのはファンも知っているんだけど、そこでよーいドンでマイナスになっちゃって、100を超えちゃうと、戻すのがすごく大変なのよ。これは誰でも大変。HIRO君が最下位になって、マイナスが200近くまで行ったときに、これで今年はプラスになるかもしれないけど、年内はマイナスで終わると思うわけ。今日トップ取ったから1トップで浮きになる状況だけども、それを言わなければ、もっと早くプラマイゼロになっているはずなのよ。自分で自分にプレッシャーをかけてしまった、それがマイナス面だね。

僕に言わせると、それも麻雀の力。どういう戦略を立てるかというところではミスったと思うわけ。だから何も言わないというのが一番楽なんだけど、それをすべきだったね。ものを言うんだったら、たとえば200くらい浮いて、それくらいから「首位を目指します」とか、そういうことであればコメント的にも分かるし内容も分かるんだけど、やる前から言っちゃったっていうのがプレッシャーになっただろうなって思った。

■下石はあの2000点をアガってラスになるのはダメ

今日の麻雀はいろいろ見たけど、下石さんがよーいドンで、東1局で2000点をアガったんだよね。1巡目に【西】をポンして、あとはサクサクって引いて2000点でアガったんだけど、これは僕なんかは好きじゃない。もちろん、麻雀の打ち方っていうのは打ち手によってみんな違うから、僕が嫌いでも合っているものは合っているのよ。それが悪いと言っているんじゃないんだけど、その麻雀で東3局くらいでラス目になってたらダメだよね。寿人に12000放銃かな、それはよくはないよね。「その2000点の麻雀っていうのはどういう麻雀なんだ?」ってなっちゃう。なんか一貫してない。

2000点でコツコツアガっていって、大きいのもあるだろうけど、それでトップを目指すというなら、「この人はこういう打ち方でいろいろできて技量があって強いんだな」と思うけど、麻雀を見ちゃうと、普通だなと思うわけ。僕は他のところで1試合だけ対局したことがあるんだけど、そのときに「普通の人だな」って感じているわけよ。すごく強いとも思っていないし、読みが鋭いとも思っているわけじゃない。

勝っていること自体は、Mリーグで初年度にして200いくつ浮いているからそれは素晴らしいんだけど、それはツイているんだよね。技術というものをもっと表現していかないと、もったいないよね。この2000点をアガるんだったら、12000を放銃するんだったらそれをカバーできるアガリがなきゃダメよね。それで最後まで行ってラスになっちゃうのは、なんかちぐはぐしてる。脚が地に着いていないような感じがしたね。

寿人なんかは麻雀格闘倶楽部の状態がいいから、あんまりトップにこだわっていないよね。2着をベースで考えているようなもので、手が入ればトップを取りに行く、悪ければ3着にならないって麻雀に見えたわけよ。鈴木さんなんかも結構無理して前に出てくるから、戦いに来るんで、僕なんかは見てて面白いわけね。今日は手が入っていなかったからいまいちだったけど、それで3着というのはしょうがないかなと思うね。マイナスだから悪いんじゃなくて、ゲームの内容的にしっかり打っているな、と思うから。

今回はいいメンバーだなと思ったわけよ。数字も持ってるし、寿人、鈴木優、下石、HIROと、この4人だから「面白いメンツだな、みたいな」と思うメンツだった。だけど、下石さんは見ていて何かもったいないなと思ったね。もうちょっと魅力がなくちゃいけないと思う。今年は浮いて、成績もチーム的にはいいかもしれないし、ここから200沈むのは考えられないからチームをリードしていく立場だけど、彼が来年できるかと言うと、今の麻雀を見ていたら難しいなと思うね。HIRO君は今年はスタートでものを言って始まっちゃったからアレだけど、それがなくなれば、ずっとプラスでいるんじゃないかな。僕はそう思う。

■HIRO柴田のオーラスは「ぬるい麻雀」

ただ、今回のオーラス、南4局の2本場に【7ソウ】で8000打ったやつ。この局は3巡目に【東】が出たんだけど、あの【東】はポンしなきゃダメよね。何でかというと、点数状況の問題よ。2番手3番手に満貫打ってもOK、3番手にはハネ満ツモられてもOKという状況なんだから。手牌は赤があってドラの【9マン】【4マン】【5マン】【6マン】【7マン】【9マン】という形で持っていて、【東】がトイツ。これは親満クラスが狙えるし、1回アガったらもっと相手をちぎれるし、この試合で100くらい浮いたって不思議じゃないわけよ。それを仕掛けなかった、というのはぬるいなと思うね。未熟だなと思う。トップで浮かれちゃった、たしかに満貫打ってもトップなんだけど、これがリーチに対して放銃で終わるのは、打ち方としては最悪だよ。切れ者じゃなく、二流だよね、僕に言わせると。戦って放銃になるならいいけど、オリていって放銃だから。抜き打ちでもなんでもない、ただ状況的に「打ってもOK」くらいに思っているだけ。それはぬるい麻雀だよね。これはチームにとっても、ファンにとってもよろしくない。

どうすべきかと言えば、【東】をポンして仕掛けていってアガりに行く。アガれなければノーテンで終了にする、放銃もしない。そういうことを考えるんだね。そういう、いろいろな技術が必要なわけよ。だから楽をしちゃったね、これはよろしくなかった。最後に打ってしまって、それじゃいかんねと思うわけ。これは連盟の後輩だからというわけじゃないんだよ。彼の麻雀をよく知っているし、どれくらい強いかも知っているし、そのくらいのことができるのも知っているし。でも、Mリーグで久々のトップで浮かれている麻雀をしている。これはよろしくないなと思うわけ。質が悪いトップだね。

HIRO君はもっと戦えて、ちぎる麻雀ができるし、放銃で終わるかもしれないけど、そういう麻雀ができるはずなんだよ。そういう技術を持っているのに、それができなかったからダメだって言っている。トップだからいい、じゃないんだよ。内容が悪い。

■鈴木優は3着だけど内容が良かった

だから、内容がいい2着とか3卓もあるのよ。鈴木さんは3着だけど、麻雀の内容的には俺はいいと思うよ。ツキがそんなになかったけど、その意味では鈴木さんは内容が良かった。HIRO君は内容が悪かった。寿人はチームの状況で打っているところがある。それは強さよりも、うまくなってきちゃったなと思うよね。

下石さんにはもうちょっと頑張ってほしいと思うね。この2000点が悪いんじゃなくて、その麻雀からどういうふうにゲームを締めるのかを見せてほしいわけ。全部トップは無理だけど、トップなり2着なりでどういうふうに締められるか、自分のゲームを作れるかを見せないと、自分の居場所がなくなるよね。勝っているときは居場所があるけど、負けてきたら居場所がなくなっちゃうよ。僕が言うのはキツいけどね(笑)。

でも、魅力ある麻雀を打ってほしいね。これはどこの団体だろうと関係ない。僕に言わせるとみんな麻雀の後輩で、彼らに直接声をかけることはあまりないので、その意味ではこういうところで言えるチャンスがあるなら、伝えていきたいと思う。見る人には、そういう目も養ってほしいと思うわけ。

2戦目も全部見たんだけど、仲林さんはさすがだね。女の子3人が相手だと、俺なんか絶対ラスだけどね(笑)。たいしたもんだなと思うよ。伊達ちゃんが4着回避率で首位にいて、何かゲームがちょっと違ったというのはあったね。攻めに行っているんじゃなくて守りに行っている、ラスにならない麻雀というか、そういうところがちらっと見えたね。それは気持ちの問題かもしれないけど。

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