Mリーガー復帰戦、
朝倉康心が見せた『速度』
文・中野巧【月曜担当ライター】2026年9月14日
開幕式の囲み取材にて、「麻雀の特技は?」と聞かれ、5年ぶりにMリーグに復帰した朝倉康心はこんなことを言っていた。
「うまぶり」と。
思わず笑いそうになったが、続けて朝倉は「発想にない打牌をするのですが、自分の中ではすごく考えて、一番得だと思って選んでいます。後から考えて『意外とありだ』と思ってもらえるような、そういう変わった打牌を見ていただきたいです。わざと変な牌切ってるわけじゃないですよ、勝とうと思って真剣にやった結果、そうなっているだけで」と。
この素直で、決して自分を飾らない言葉を聞いて、観戦記を書く2試合目の注目選手は朝倉にしよう、そう思ったのだった。
第2試合
東家:朝倉康心(U-NEXT Pirates)
南家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
西家:三浦智博(EARTH JETS)
北家:松本吉弘(渋谷ABEMAS)
南1局
朝倉がトップ目で迎えた南場の親番。7巡目で、彼はここから2枚切れの
を抱えて、![]()
のターツを落とした。2着の寿人とは僅差であり、ドラ受けターツも残っているのだが、朝倉は安全度を優先した。
私が最も注目したのはこの
を切る速度だった。その間、1秒未満。つまり朝倉にとってこの手は、現状の点数や他家の手の速度から、親番であっても
を使えないと価値がない手、と判断したわけである。
実際に、次巡4着目の松本からリーチが入る。
朝倉は安全牌の
を切った後、松本への現物がなくなってしまう。だが、ここでも彼は![]()
が3枚ずつ見えており、シャンポン待ちもない
をノータイムで打つ。
彼のもともとの主戦場であるネット麻雀は1打あたりの制限時間が設けられており、大体5~6秒で切らなければならない。
このとき、おそらくそこで鍛えられた、状況に応じた、牌の濃淡を見極める力がこの選択に活かされていることと同時に、彼がネット麻雀を人生で一番打っていたときの、鬼のような怖さも感じた。
結果、この局はドラを暗刻にした三浦が松本に8000の放銃となり、朝倉はトップ目のまま親と1局を終わらせた。
南3局
この局は、2着の寿人からドラのカンが入る。
朝倉は1シャンテンだったが、2秒後には打
とターツではなく、メンツを崩していった。
結果は、松本の先制リーチが入り、ドラをカンした寿人のテンパイ打牌を捉え、8000点の横移動になった。
先ほどの局に続き、この朝倉の判断とその速さには脅威を感じる。リーチがかかる前にターツやメンツを崩すという、手の進行を遅らせ、一見自分にとってマイナスな選択だが、朝倉の言葉を借りると「それでも得」と思って打っている。つまり相当な自信がないとこの速度では切れない。そのうえ、2局とも結果的には自分にとって良い結果になっているのだ。
結果はこちら。2回のアガリで放銃が0の朝倉がトップを逃げ切った。5年ぶりで「緊張する」と言っていた彼の麻雀は、ブランクを感じさせないどころか、前より自信を持って、余裕のある印象すら与えた。Mリーガーでなくなってから今まで、朝倉が取り組み続けてきた麻雀が、復帰初戦トップという最高の形で帰ってきた。その内容から、今日だけでなく、今シーズンの注目選手であることを全Mリーグファンに知らしめる試合となった。
自身の対局をコメント付きで見返す朝倉。今日はいい夜になったに違いない、と言いたいところだが、そうとも言い切れないのが彼の人間味あふれる部分だろう。

日本プロ麻雀連盟所属、プロ歴3年目。
「麻雀あるある」の集積が雀力向上につながると信じ、日々あるあるを探している。
いつか自分が主役の観戦記を書かれることを願って。












