こうして高宮は
小林の追っかけに一発で放銃。致命傷となってしまった。
「痛恨の局」と「会心の局」を聞こうと準備していたのだが、高宮の口から出るのは反省ばかりだ。それにしてもよく覚えているし、よく話してくれる。寡黙なイメージが強かっただけに、思うところがあったのだろうなーと感じた。
「ふと思ったんです。前原さんや寿人さんは憧れの存在だし、とてもよくしてくれます。このチームじゃなかったら私はやっていけなかったかもしれない。2人はとても頼りになる存在だし、感謝してもしきれないです。そして、今後も勉強したり、参考にさせていただきたいと思っています」
「でも…」
今から言うことを確認しているのか、空白の時間は流れた。
そして一呼吸置いて、重い口は開かれた。
「私は絶対前原さんになれないし、寿人さんにもなれない」
そうなのだ。攻めるだけ攻め切って、メリットも痛みもその体に刻んできた寿人の攻めは寿人にしかできないし、前原のガラクタリーチも数多の経験を経ての判断なので簡単に真似することはできない。
さて、冒頭のオリ打ちをしてしまった高宮だが、東2局。
石橋のリーチを受けてこの手牌でと連続でプッシュ。
安全牌も少ないので比較的押しやすい手牌だとは思うが、それにしてもオリ打ちしたばかりで頭が真っ白になっていてもおかしくない場面だ。リーチの石橋は親だけによく押せたと思う。
押し切って8000のアガリ。続く東3局。
またしても上家・石橋のリーチにと軽く押したあとに、このドラのを引いて何を切るか。
場を睨む姿も美しい。
現物は多くてオリ切ることはできそう。高宮は
を切った。ベタオリするわけでも真っすぐいくわけでもない、中庸な一打。ドラ周りを引いての押し返しをはかった、バランスのよい選択だと思う。
こうして回った後に、またしても石橋からの3900のアガリ。
(リーチだったかしら…)(また滑るのかーい)
「はじめは緊張しましたが、3か月戦ってきて慣れてきた部分もありますし、今年からはもっとしっかりと戦えると思います」
たしかに前原や寿人には絶対なることができない。しかし逆に言うと高宮にしかできないことだってあるはずだ。この日の逆襲のように心は熱く、頭は冷静に、高宮は高宮として戰い抜いてほしい。
——Mリーガーになって一番変わったところってどこですか?
「私の周りの、麻雀とは関係ない方からも応援の声をいただいて、とても驚いております」
——今日さかえ杯での対局があったと思うんですが、そこでMリーガーだけには負けねぇ!みたいな意志を感じたり、嫌がらせを受けたり…というようなドロドロしたものは…
「一切ありませんね(笑)みなさん本当によくしてくれています」
——グラビアの仕事も続けるんですね
「はい。やっていて楽しいですし、水着になることも抵抗がありませんでした。私が目立つことにより、麻雀を知らない層にもよいアピールになるのであれば、是非これからもやっていきたいと思っています」
高宮にしかできない仕事をこなし、高宮にしかできない麻雀を目指し、これからも高宮は高宮としてMリーグで暴れ回り、盛り上げていくだろう。
完成されつつある20人の個性溢れる麻雀を見るのも面白いが、未完成な部分の多い1人の打ち手の成長を見守るのも、Mリーグの楽しみ方の一つだと思う。
(C)AbemaTV