多井隆晴、ボーダー争いで示した“勝ち切る麻雀”【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 3/12 第1試合】担当記者 喜多剛士

多井隆晴

ボーダー争いで示した

“勝ち切る麻雀”

文・喜多剛士【木曜担当ライター】2026年3月12日

レギュラーシーズンも残り10試合を切り、ボーダー争いは一段と熱を帯びてきた。 この日の第1試合は、ドリブンズとABEMASの直接対決。

6位と110.9pt差で追うABEMASにとって、ここは何としてもトップが欲しい一戦。

一方、5位のドリブンズは、ABEMASより着順で上回っておきたい場面だ。

そして風林火山の永井は、個人タイトルの「最多トップ賞」「ラス回避率賞」を争う立場。 少しでも優位な位置に立つため、今日の半荘も落とせない。

それぞれの狙いが交差する、緊張感の高い一戦となった。

第1試合

東家:渡辺太赤坂ドリブンズ
南家:永井孝典EX風林火山
西家:多井隆晴渋谷ABEMAS
北家:堀慎吾KADOKAWAサクラナイツ

実況:古橋崇志 解説:朝倉康心

東3局

親の多井は第一ツモで【中】を重ねた。

トップ目の堀は、ドラの【5マン】を雀頭に構えた形。カン【6マン】を引き寄せ、さらに【2ピン】を重ねて234の三色が見えるリャンシャンテン。

しかし、多井は【中】を暗刻にし、【7ピン】を引き入れてテンパイ。迷いなくリーチを宣言する。 待ちは【5ピン】【8ピン】、山に4枚。親リーチとしては十分な勝負手だ。

永井が多井のロン牌の【5ピン】を引く。現物はなく、【5ピン】のワンチャンスで【3ピン】を外して前へ進む選択を取った。

【3ソウ】のトイツ落としで回っていた永井に【赤5ソウ】が入る。ネックだったトイツが暗刻へと変わり、しかも赤。その一枚で手牌の価値が跳ね上がり、局面が一気に勝負手へと姿を変える。永井はスジの【1ピン】を外してイーシャンテンに構えた。たった1枚で手牌の価値が大きく変わるのが麻雀の面白さだ。

そして、永井が引き寄せたのはドラの【赤5マン】。手牌にすべての赤が揃う「オールスター」となり、【5ピン】【8ピン】【4マン】のテンパイ。永井もリーチを宣言。三河の猛将が、真っ向から親リーチに襲いかかった。

結局、両者共ツモれずに流局。

永井の手牌をのぞき込み捨て牌から巻き戻すように何度も確認する多井。

二度見する多井に永井は微動だにしない。

多井は5巡目のリャンメンリーチが実らず悔しい流局。

そして永井もまた、個人タイトルを狙う立場。ラス目から赤3枚の高打点でテンパイだけにアガリたかった局面だった。

 

東4局

多井は么九牌だらけの配牌から、丁寧にツモを重ねて早々にイーシャンテンへ。 ドリブンズの太をわずかに下回る状況だけに、ここは何としても加点したい局面だった。

次巡、堀から【8マン】が放たれ、ポンすればテンパイが取れる形だが、多井はこれをスルーする。 麻雀における平均テンパイ巡目は8〜9巡目と言われる。6巡目とはいえ、トイツが2つある苦しい形。ポンテンを取っても不思議ではないが多井は門前進行を選択した。

なにより、この手には赤もドラもない。相対的に他家へドラが寄っている可能性が高く、相手の高打点を許すリスクがある。だからこそ、たとえ1000点のアガリでも相手のチャンスを潰す価値はある。しかし、ボーダー争いで後がないABEMASにとっては、トップこそが絶対条件。【8マン】のポンテンを見送ったのは、多井の“トップを獲る覚悟”そのものだった。

親の堀がテンパイを入れ、【3ピン】【白】のシャンポンで先制リーチ。

そこへ多井が追いつく。【4マン】【7マン】のリャンメンで追っかけリーチ。【8マン】のポンテンを取らずに手を育て、リャンメン変化からの堂々たる勝負手だ。

そして多井が【4マン】をツモ。リーチ・ツモ・タンヤオの1000-2000。裏ドラこそ乗らなかったが、【8マン】を鳴かずに門前を貫いた判断が実を結んだ。多井の“トップを獲る覚悟”に応える、価値あるアガリとなった。

 

南3局

多井は愚形が残る苦しい3シャンテン。通常時なら一度ブレーキをかけてもおかしくない場面だが、ここで選んだのはドラ表示牌の【6マン】。この手牌は“降り切れない”と判断し、早々にダブ【南】をポンした堀に対して、あえてドラ表示牌を副露させることで永井・太の二人を縛りにいく一打だった。麻雀は相手に甘い牌を切らずに絞って苦しめるだけではない。“相手の手を進めることで、別の相手を苦しめる”という選択肢もある。条件戦ならではの選択に、多井の引き出しの多さを改めて感じさせる場面だった。

かつて多井から 「相手の立場」「自分の立場」「客観的な立場」 この三つの目で場を見ろと教わったが、まさにそれを体現する一打だったと思う。

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