Mリーグレギュラー解説者、前田直哉が12月5日第1試合をそれぞれチェック。
思わず前のめりになった、あの選手の押しとは?
【取材・構成:東川亮】
白卓:麻雀チャンネル第1試合
■仲林のらしさが出たヤミテン
東1局、亜樹ちゃんの![]()
待ちリーチに対して、仲林君がタンピン赤ドラの![]()
でテンパイして、現物待ちなのでヤミテンを選択しました。前巡に
が切られているので、テンパイ打牌の
は強い牌ですけど、そこでヤミテンにしていたところが仲林君っぽいなと思いましたね。その後、![]()
が1枚も切られないままもう一回無スジを切ってもヤミテン続行。安全牌に窮している人から現物の
が打たれることを待っていたのかもしれないですけど、さすがに3つ目の無スジでリーチをかけていきました。
現物なので1巡待って、次の危険牌でリーチするかもと思ったけどそこもヤミテン、そしてさすがにもう出てこないと思ってリーチしていると思うんですけど、あの辺は仲林君なりにいろいろな駆け引きが本人の中であったんでしょうね。結果、3000-6000という最高のアガリになりました。
■勝利を手繰り寄せた
プッシュ
東4局、テンパイしていた親番の本田君が、仲林君のリーチを受けた状態で最終手番に
を持って来るんですね。仲林君は
切りリーチでだいぶリャンメンが通っているなか、![]()
は無スジでキツい牌なんです。これを押して親番を維持するかどうか、そこまで点差もついていないのでどうするのかなと思ったんですけど、そこで
を押してテンパイを取りきって連荘したのが、2本場の4000は4200オールにつながったと思います。もちろん
でロンされたらひどいことになるんですけど、あの
を押したからこの試合のトップがあったのかなと、すごく思いましたね。あそこでしっかり押せるところが本田君の強さだと思います。
ただ、本田君が大きくアガった後、仲林君の![]()
待ちリーチに対して、いつもの本田君なら行っている手牌だったと思いますけど、結構点数を持っていたので、ここは行かずでした。あれは競っていたり点数がなかったりしたらある程度行っていて、本田君のアガリになっていたか、流局してテンパイを取れていたかだったと思いますけど、本田君は萩原さんから「落ち着いて打つように」とよく言われているので、そうしたのかもしれないですね。これが良かったのか悪かったのかと思って南場を楽しみに見ていましたけど、結果はトップでした。その冷静さが勝利につながったのかもしれないし、もしかしたらもっと大きなトップにつながったかもしれませんし、それは分からないですけどね。
■亜樹のようにスタイルチェンジできる人はやっかい
この試合、亜樹ちゃんはあまり手が入っていなかったんですけど、点数状況的に行かざるを得ないので、チートイツの1シャンテンからでも結構押していました。昔の亜樹ちゃんだったらもうやめていただろうなという牌でも押していて、ここのところ攻めにスタイルが変わっているのが伝わりますよね。押せるのはチームの調子がいいのも絶対にあると思いますけど、チーム状態も加味して、いい状態なんだろうなと思って見ていました。結果にはつながらなかったですけど、結構遠い仕掛けから攻めるとかもあって、そういうのは昔の亜樹ちゃんにはあまりなかったと思います。そうしてスタイルを変えていかないと勝てないということで、亜樹ちゃんのスタイルの変化が見られたのも面白かったです。
実際、亜樹ちゃんの麻雀は一発裏ドラのない連盟公式ルールでもかなり変えてきていて、前だったらリーチをしないような愚形待ちでも結構リーチに行くようになっています。僕の場合は見るのも楽しいですけど、いつか一緒に対戦することになるつもりでデータも入れているので、それをデータを変えなければいけなくなる分、そういうふうにスタイルチェンジできる人はやっかいだなと思います。それは成長だし勝つためにやっていることで、長年やっていても成長できるのは素晴らしいですよね。
■スイッチャーの技量も楽しめるポイント
あと、本田君が4000は4200オールをアガった局で、
が序盤に切られたときに亜樹ちゃんが
のトイツを持っていて、僕は「亜樹ちゃんはポンしないだろうな」と思って見ていて、結局スルーしたんですけど、
が切られた瞬間すぐにスイッチングで亜樹ちゃんの顔が映ったんです。それを見て「スイッチャーの人は
を鳴くんだろうな」と思いました(笑)。
スイッチャーは麻雀プロの方が多いそうですけど、そこはスイッチャーの技量というか、發が出たら亜樹ちゃんにスイッチングしなきゃと考えているところもすごいし、そういう裏方さんの技術も僕は楽しめたし、ほんの一瞬でしたけど、僕にとってはほほえましい、ああいうのも含めて「Mリーグって楽しいな」と思えた瞬間でした。そういう見方でも視聴者の方に楽しんでいただけたら、さらに面白いと思います。
黒卓:麻雀LIVEチャンネル第1試合
■中田の押しが生んだ6000オール
この試合は南場に入ってから急に点数が動きましたね。南1局の中田さんの親番で、阿久津君が![]()
待ちの先制リーチをかけるんですけど、そこに対して中田さんはまだテンパイしていないところから、現物を抜くことはいくらでもできたのに、4巡目の
切りリーチに対して
を押したんです。それを見て「あ、
押すんだ。まだ行く気はあるんだな」と思っていたら、次はドラまたぎの
も押していきました。
今までだったら先制リーチが入るとすぐにオリることが多かったと思うんですけど、中田さんはここも押すんだと。
切りリーチだから「467で持たないでしょ」ということで
を押したのかもしれないですけど、序盤のリーチなので分からないし、危険牌であることは変わらないので。
で、そこをしっかり押して、
が切られたけどみんなオリているのに誰も合わせないということで、カン
待ちで追っかけリーチ。阿久津君のリーチは最初の時点で6山でしたけど、その当たり牌の
を重ねて
を切ってのカン
待ちリーチで7700を打ち取った、これが大きかったですよね。
この一局を見て、中田さんの新たな一面を見た感じがすごくしています。ただバランスが良くなっただけじゃなくて、しっかりと山にいそうな牌を見極めて、「この待ちならカンチャンでも戦えるな」ということを理解しながらやっているんだと思いました。僕も今年は中田さんのデータを書き換えていますけど、こういうふうに考えながらできるようになっているんだ、成長しているんだな、と思って見ていました。あのカン
待ちのリーチでアガりきったことが次局の6000は6100オールのアガリにつながったわけで、もちろん無駄押しはダメですけど、ある程度勝算があるんだったら押すことはすごく大事なのかなと、僕自身も再認識させられた感じです。すごく良かったと思います。
■中田の成長を、他チームも警戒しているのでは
あと、南2局に醍醐さんがドラポンして、たろうちゃんは自風の
をポンして![]()
待ちという局があったんですけど、そこで中田さんもチートイツでテンパイするんですね。その局面のことを試合後インタビューで話していて「
はドラポンしている醍醐さんにはまあまあ通りそうだし、たろうさんには当たりそうだけど、一番安そうだから当たってくれ、と思って打ちました」と言っていたんですよね。その状況について
のトイツ落としとかも振り返っていて、手出しもちゃんと見えているし、たろうちゃんに![]()
が危ないことも分かっているし、しかもそこでテンパイを取りつつ差し込み気味に打ったと言っていたので、本当に成長が著しいなと思いました。他のチームもだいぶ警戒しないといけないと思っていると思います。
2卓同時開催だから、試合が終わるとついもうひとつの卓を見たくなるんですけど、インタビューを聞くのも結構大事だなと思います。そこまで考えてやっているんだ、成長がすごいなと思わされるインタビューでした。
たろうちゃんは安定していましたね。阿久津君はテンパイまでは入るんですけど、アガリまで結びつかないので。やれることはやっているけど結果につながらない、山にアガリ牌がたくさんいてもつかんでしまう、麻雀を長いこと打っていればそういうことはあると思いますけど、それにしてもそれが長く続いている感じがあります。本人も明るい感じでインタビューを受けていましたけど、本人的にもちょっと辛いのかなと、見ていて思いました。だけどメンタルの強い子だと思うので、まだシーズンも半分以上ありますから、奮起して同じようにやれることをやっていけば、必ずいい結果を持ち帰ることもできると思うので、くじけずにやってほしいと思います。

日本プロ麻雀連盟所属。
2015年には鳳凰位と最強位を同時戴冠し、現在もA1リーグで戦うトッププロ。
2025年からはMリーグのレギュラー解説を務めている。














