それでも堀は考える。
不利なのは百も承知だ。
しかし、まずオッズが違う。
トップへのボーナスポイントと、3着へのペナルティポイントを比較すると、トップになる現象が3着に落ちる現象の1/3でも見合うのだ。
村上だってリャンメンと決まったわけではない。
愚形だってチートイツだってある。
ワイはなんのためにサクラナイツに呼ばれたのか。
…トップを持ち帰るためや。
堀はまっすぐと場を見据え、いつもより少し力のこもった手で
を切った。
「ロン」
無情に響く村上の声。
を捉えて5200のアガリ。
オーラスの多井の親は、勝又が軽く流し、頂上決戦は勝又がモノにした。
勝又は僥倖のアガリのあとは、展開が向いた。
子が打ち合ってほとんど点棒を減らすことなくセーフティリードを保ったままだった。
その中でも、全くの隙を見せなかった。
そうした中で、やはり印象的だったのが堀だ。
を掴んだ時、初めて苦悶の表情を浮かべた。
飄々としているが、やはりそれだけトップが欲しかったのだと思う。
メタルスライムは逃してしまったが、ナタを振り続ける限り、必ずトップを量産する時期がくるだろう。
「とにかく強い人と打ちたい」
そう言っていた堀は、今一番幸せなのではないだろうか。
麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で戦術特集記事を連載中。note「ZEROが麻雀人生をかけて取り組む定期マガジン」、YouTubeチャンネル「ZERO麻雀ch」