二人の声が重なった。しかし、Mリーグにダブロンはない。上家優先、手牌を開いたのは松ヶ瀬だった。
これで松ヶ瀬は自身3連勝、首位に立つチームを牽引する活躍だ。試合後のインタビューでは多井との対戦について振られ、「まだまだ何回もやっていくと思うが、とりあえず今日は僕の勝ち。この後も勝ち続けられるようにやっていきたい」と語った。
一方の多井だが、苦しかった初戦に引き続き、この試合も厳しい展開が多かった。後手に回ることが多く、勝負手もなかなか実らない。象徴的だったのが南1局1本場、先制の待ちリーチが決まらなかったことだ。リーチ時点で山に6枚、寿人の追っかけリーチを受けた段階でも残り枚数は5対1で多井が圧倒的に有利だったが、残り1枚を寿人にツモられて失点し、親落ち。自身は満貫やハネ満が見える大物手だっただけに、さすがに厳しいものがあった。
ただ、そんな苦しい2戦でも、多井は自らの技術でラスを回避している。この試合の南4局では、4番手ながら自身のアガリは厳しいと見るや守備にまわり、「満貫がほしい松ヶ瀬が寿人から条件クリアの直撃を取る」という薄い条件が成されたことで、3着に浮上して試合を終えた。麻雀はどんな強者でも絶対に勝てるわけではないゲームだが、その中で多井は「負けない」技術を知っている。もちろん勝ち方も知っているだけに、一つかみ合えば一気に成績を伸ばしてくるだろう。それは松ヶ瀬が一番よく分かっているはずだ。
話を冒頭のインタビューに戻す。松ヶ瀬はRMUでプロキャリアをスタートさせた「生え抜き」である。そして自身の後に続くRMUの若手たちに、道や可能性を示したいとも話していた。松ヶ瀬がMリーグで多井と激闘を繰り広げることは、そのまま自身の言葉を体現することにつながるだろう。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。