重厚な読み合いと駆け引きの中で　本田朋広が我慢でつかんだ半分の勝利【Mリーグ2021観戦記10／28】担当記者：東川亮

その後、堀もテンパイ。堀のアガリ牌は山に1枚、松ヶ瀬のアガリ牌も、山に2枚あった。

しかしこの局面を制したのは本田、最後のアガリ牌をツモ。打点こそ1000-2000は1200-2200だが、本田にとっては値千金、自らの窮地を救うアガリだった。

その後、本田は少し持ち点を減らすものの、40000点を持ってオーラスを迎えた。2番手・堀との点差は11000。現状、満貫ツモ圏外である。

アガリトップの本田に、アガリへの特急券となるがトイツになる。

数巡後、松ヶ瀬がをツモ切り。鳴けば役を確定させての1シャンテン、ポンの一手かと思われた。

だが、本田の選択はスルー。堀がと手出ししてきており、かなり手が進んでいそうだったことで、安パイを消費して手を短くすることを避ける選択だったか。この局面で、本田が絶対にやってはいけないのが堀の逆転を許す放銃。巡目が中盤に差し掛かる中で、そこに備えたということだろう。この辺りは慎重だ。

この局の先制リーチはたろう。待ちの5メンチャン、ツモならピンフ三色で、一発や裏ドラが絡めばハネ満、松ヶ瀬をかわして3着で試合を終えられる。このとき、たろうはのツモアガリ以外は拒否する構えだったという。

親番の松ヶ瀬がたろうの切ったをポンしてテンパイ。たろうとしては松ヶ瀬が連荘してのもう1局に期待するところもあり、これは織り込み済みだろう。

さらに、ドラ赤を使ってのハネ満を目指していた堀が、をチーしてテンパイ。でしかアガれないが、たろうがリーチをかけたため、供託を合わせればツモアガリで本田と同点トップになる条件ができている。

次巡、堀はを引いて選択。を切れば待ちになるが、1枚も見えていないも怖いところ。は直前に松ヶ瀬が通している。

堀はを切って単騎待ちを選択した。攻撃はもちろん、切りのリスクも踏まえてのことと思われる。

たろうは本田から出た高目を見逃し。本田からのアガリでは、どうあがいてもラスが確定する。目先の8ポイントより、たろうは着順アップの可能性を追った。

直後、堀はさらに選択を迫られる。怖いと思ったのスジ引き。が4枚見えていてのリャンメンはないが、待ちはまだ否定されておらず、リーチのたろうはもちろん、テンパイ気配の松ヶ瀬にも怖いところ。

堀の決断はツモ切り、ここは勝負に出た。

そして次巡、堀の粘りが実を結ぶ。山に最後のツモ。普段から冷静沈着、所作も落ち着いている堀も、思わずツモ動作に力が入った。

2000-4000のツモに供託1000点が加わって、堀が本田と詰めた点差はきっかり11000点。4者の思惑絡み合う一戦は、Mリーグ史上2度目となる同点トップという結末に終わった。

本田は試合後、「どうしてもトップを取りたかった」と語っていた。そのために、本田はこの試合で、とにかく我慢をした。もしかしたら、雷電らしい勝ち方ではなかったかもしれない。しかしそれでもポイントを持って帰ってくる、そして低迷するチームのムードを変えてくれる。そんな存在を、雷電は求めていたのだろう。そして本田も、この試合を通じてまた新たなMリーグの深みと面白さを感じたのではないだろうか。