名もなき麻雀プロたちが見せた極上のドラマ 大塚翼、泥にまみれながらもつかんだ勝利 #麻雀最強戦2022 【 #全日本プロ選手権 】観戦記【決勝卓】担当記者 #東川亮

「リーチ」
田本は、幸運を祈る権利を得た。

一つ鳴いていた大塚は、吉田の【6ピン】をチー。田本の一発とハイテイ手番を消す。手牌は7枚。いずれ来る吉田の攻めを考えると怖いが、それでも逆転の可能性を減らす行為はサボらない。すでに大塚は立ち直り、やるべきことを理解していた。

次巡、吉田テンパイ。

「リーチ」

吉田は、勝利をつかみ取る資格を得た。

宣言牌を、大塚がさらにチー。吉田の一発ツモ、田本の一発放銃を消す。手牌4枚、大塚はこれでしのぎ切らなければならない。

田本はツモれず。最終ツモ番、吉田は山に手を伸ばす前に、一つ大きく息をついた。

願いを込めても、ツモる牌は、ただそこにあるだけだった。

ハイテイ手番、大塚の手に両者への安パイはない。

大塚は2人のリーチが入る前に吉田の【5ソウ】をチーしており、【5ソウ】は吉田への現物だった。だが、田本に通る確証はない。リーチの時点で条件を満たす可能性があることは明白、放銃すればホウテイがつき、ハネ満の可能性は上がる。

間違えられない、最後の選択。

大塚は、【5ソウ】を切った。
誰も、何も、言わなかった。

大塚は、勝った。

新野竜太。
田本英輔。
吉田昇平。
そして、勝った大塚翼。

無名の彼らの試合には、見せ場もミスもあった。しかしそれ以上に、彼らの一打一打に人生をも懸けるような闘牌には、心を打つものがあった。

トッププロではないかもしれない。
有名ではないかもしれない。
実力も人気も、まだまだかもしれない。
泥臭くて、見苦しくて、無様だったかもしれない。

けれども、そこには熱があった。
名声欲、勝利への執念、麻雀への愛情があった。
必死にもがく姿は、麻雀プロとして本当に美しかったと思う。

勝者は一人、でもきっと彼ら4人は、麻雀プロとしてかけがえのない財産を手にしたはずだ。将来、彼らが麻雀プロとして大きく成長したとき、きっとその根幹にはこの日の経験が息づいているに違いない。だからこの対局を見た方々には、彼らの今後を少しでも気にしていただけたなら幸いである。

大塚プロ、優勝おめでとうございます!
ファイナルでのさらなる躍進も期待しています。

 

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