前半戦を終え、赤坂ドリブンズはマイナス406.5ポイントの第8位と、厳しい戦いが続いている。今シーズンでファイナルに進めなければ選手入れ替え規定に抵触し、メンバーを入れ替えなければならなくなるという試練のシーズン。ここまでノートップと苦戦が続く村上淳は、ファンの温かい応援を胸に、後半戦での巻き返しを誓った。
──前半戦が終わりましたが、チーム・個人として、今シーズンのここまでについてはいかがでしょうか。
チームとしては、今シーズンが始まる前にしていた想定と真逆になったという感じです。
ドリブンズはレギュラーシーズンでプラスしたことがないんですよね。我々4人や選んでくれた監督、チーム関係者も含め「そこまで負けるチームではない」と思っていまして、「今年くらいぶっちぎってファイナルまで行けるんじゃないか」という希望的観測がありましたが、それが見事に外れてしまっています。
数字の上では僕と(丸山)奏子にまだトップがなくて、Mリーグ以外のところでは通用しているはずなのですが、Mリーグでは本当に結果が出ていません。
練習量は奏子が一番多いと思いますし、僕ももちろんMリーグの試合は全部見ていて、私設リーグや勉強会とか、優勝した1年目と変わらずにやることはやっているんですけど、結果がついてこなくて、悔しい思いでいっぱいです。
──特に長年麻雀プロの世界を見てきているファンからすると、不思議に感じていると思います。
おこがましいかもしれませんが、チームとしても個人としても、ここまでは負けないかな、という想定を超えていますよね。ちょっと負けすぎだろうって思います。
チームのカラー上、このくらい打てばその人の平均値に近づく、みたいな回数はやっていないと思いますけど、それをいうのはただただかっこ悪いし、その回数で勝つことを求められているわけですから。しょうがないというのはやめたいですけど、原因が何かと言われると、麻雀というゲームの性質上こういうことはある、と言わざるを得ません。
ただ、そういうことを20数年間やって勝ってきて、最高位も3回獲ったから、Mリーガーになっているわけです。うっかりミスは置いておいて、「こちらの方がいい」と思ったものを後から検証したらおかしかった、という打牌は僕の中ではありません。
即リーチをするべきところでできていなかった、というのは2つ3つありましたけど、それで250負けるのか、という話ですし、いいプレーもあるものの、とにかく結果がついてきていません。僕は他の選手より仕掛けが少ないし、打点を狙うからアガリ率は低いんですけど、それにしたってアガリ率11パーセントでは勝ちようがないですよね。それでラス3回というのは、何とか耐えている、という感じです。
──今シーズンは入れ替え規定に引っかかる可能性があり、残り出場試合が限られる中で結果を残さないといけません。プレッシャーなどはいかがですか。
麻雀プロを20数年間やっている中で、「この試合が大事」とか「ここでトップを取らなきゃもうだめだ」という場面を何度も経験して、トップを取った、やっぱりダメだった、を繰り返していますけど、そこで意気込んだから勝つ確率が上がるかというと、むしろマイナスですよね。
配牌とツモと相手の手牌だけが勝負なので、精神的なものは基本的には持ち込まないようにしています。ファイナルに行けなかったらドリブンズの選手が入れ替えになる、昨シーズンから負けているから自分が候補になりそうとか、そういった感情はマイナスでしかないと思うので逆に忘れて、打っている最中は「今シーズンの1試合目だ」くらいの感じでいきたいです。
トップを取りたいのはみんなそうなんですけど、そうじゃない試合で1ポイントでも多く持ち帰る、トップを取りたいがゆえに取れる2位を取り逃して3位4位になってしまう、みたいなことは避けないといけません。
トップを取りたい思いと麻雀の内容は分けないといけないと思っていますから、麻雀中は麻雀だけに向き合って、とにかく1ポイントでも得する方法だけを考えて、純粋に麻雀だけをやることに取り組んでいきたいです。
──ファンの方は期待も心配もしていると思います。皆さんに向けて、改めて後半戦への意気込みをお聞かせいただけますか。
誰かの思いで牌が変わらないのは自明なことですが、僕らも人間です。精神的に落ち込んでいてもくじけずに前を向けるのは、皆さんの温かい声があるおかげなのは間違いのないことです。
特に僕個人は昨シーズンからものすごく負けていて、辛辣なコメントもありますけど、どちらかというと応援のメッセージが多くて、それで泣いてしまうこともありました。
他チームの仲がいい後輩とか大先輩、あとは他のチームのファンの方からも応援していただけているのもめちゃめちゃ見るんですよね。そういうのは本当にありがたいですし、プロは見られて応援されてなんぼなので、応援してくださる思いに応えたい気持ちはすごくあります。
軽々しくできないことを言うものではないのですが、目標として、とにかく残る試合は生まれ変わって全部トップを取るつもりでやりたいと思います。麻雀を知りすぎていると「次はトップを取る」とか言えなくなるんですけど、今年のドリブンズのテーマは「気合いで期待値を超えていく」みたいな感じなので、僕も期待値を超えまくって、残り試合全部でトップを取るつもりでいきます。
今は最下位ですけど、ここからMVPを取ったらめちゃめちゃかっこいいですし、可能性はゼロではないですから。とにかくあんまり落ち込まないように、精神的に明るくいきたいと思います。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。