対戦相手への敬意と、自身の矜持で── 萩原聖人はその牌を掴み取った【須田良規のMリーグ2022-23セレクト・3月7日】

松本を責められるような状況ではないと思う。
【6マン】【9マン】待ちを霞ませ、ホンイツ偽装を可能な限り徹底した萩原の執念が、【6マン】を引きずりだしたのだ。

それでも松本は、何十秒も熟慮に熟慮を重ねていた。
ここまでやって、萩原はやっとの出アガリを果たした。
この局は萩原の執念と、松本の疑心が本当にギリギリまでぶつかり合った、名勝負だったのである。

しかしこの局以後、萩原は2度のめくり合いに負け──、
がっくりと肩を落とす。

萩原はシーズン当初、ここまでの成績の不振で
「ほぼ辞めるつもりだった」
と語っている。

牌の巡り合わせの悪さもあっただろうが、麻雀だけに人生を費やしてきた他の選手たちの意地もある。
望んだ結果を得られないことへの葛藤、もどかしさが萩原をずっと苦しめてきただろう。

だがこの局の萩原は、テンパイ効率を犠牲にしても、
相手選手が自分の手牌を読んでくることへの敬意、
それを見越しての何としてもアガろうとする不屈の熱意を感じさせた。

それに応えるように、チームメイトは続く3月9日(木)の試合で連勝を果たす。

まだ、辞めるわけにはいかないと──、
そう萩原が思うかどうかはわからない。

ただこの局、松本からもぎ取ったアガリには、
確かに萩原のMリーガーとしての矜持があったし、

チームメイトやファンたちの支えが、まだ未来を照らしてくれている。
そんな気がしてならないのである。

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