20名ほどの選手の中から最終的に1名を指名するのですが、いいなと思った選手、麻雀が好きで覚悟があって、Mリーガーになってもさらに努力をし続けてくれそうな選手は何人もいました。そういった選手たちと出会えたことも、我々にとっては嬉しいことでした。
ちなみに、問題に関しては後日ドリブンズのホームページなどで皆さんに見ていただけるようにする予定です。
──セレクションも含めて、指名する選手の所属団体や年齢は考慮されているのでしょうか。
基本的には、所属団体や年齢で縛りを設けることはしていません。より良き選手を獲得する上では分母は大きいほうがいい。とはいえ、チームとしてスカウト機能があるわけではないので、現状では麻雀界の全ての選手を追えず情報が限られる中で、どうしても園田が所属している最高位戦、たろうが以前所属していた協会の選手が多くなるところはあります。
──丸山選手に関しては「育成枠」という言葉が使われ、実際に他の選手と比べてあまり起用されず、「もっと丸山を使え」というファンの声もありました。今回獲得する女性選手も、そのような扱いになるのでしょうか。
「もっと丸山を使え」の理由が何なのか? が明確になっていないので、議論することが難しいですね。そもそも、そのファンというのが丸山さんのファンかドリブンズのファンか、Mリーグファンなのか麻雀ファンなのか、その全てなのか、とにかく個々人で違うので一元化して議論するのは難しいと思います。
チームの揺るがざる方針として、まず公平でありたいんですよ。優勝したら選手たちは給料が上がる、インセンティブがもらえる。だからみんなの共通認識として、その利は追うんです。なので、そうした中で選手を出すとしたら、強い選手を一番多く出して弱い選手は一番出さないでしょう、という話です。
人気とかは関係ないでしょ? ハンカチ王子がすごく人気で出場を求める声が多いからバンバン登板させる、とかないでしょ? いやもちろんわかる、気持ちはわかりますよ。僕もその昔、サッカーの日本代表で「岡野を出せ!小野を使え!」とか言っていましたし。まだTwitterなんかない時代で、友人と家で観戦しながら叫んでいただけだから岡田監督の耳には届かなかったと思いますけど(笑)。
丸山についても「育成枠」ではなく、「育成という観点を持ちたい」ということで、彼女が数年経って他の女流選手と比べて強くなれば他のチームに対して優位に立てる可能性があるので、そこを目指したというだけの話です。そしてこの育成に関しても試合に出ることが育成の全てではなく、日々の生活や環境の方が雀力向上においてよっぽど大きく、そこの部分で育成していくということをチームとして目指したのです。
チームの方針として、一番勝てそうな選手をたくさん出すのが僕の仕事なので、そこについては来シーズン以降も出場試合数に差は出てくると思います。そこに性別の差なんかないです。誰でもいい。勝つ可能性が高いと思える選手をより多く試合に出すという努力をし続けます。
ただ、選手には日々練習から切磋琢磨して出場機会を獲得してほしい、監督の選択肢を増やしてほしいと思っています。ですからもしかしたら、来シーズンは園田やたろうが一番出場試合数が少なくなることもあるかもしれません。あくまでも姿勢、可能性の話ですけどね。
Mリーガー、いや、これは違うかな、チームによって方針も違うし、ただ、少なくともドリブンズの選手にとって一番のライバルは、自チームの選手だと思うんです。別に普段から意識するわけでも、ライバル視するわけでもないですけどね。
古い例え話、しかも野球ばっかりで申し訳ないんですけど、江川のライバルは掛布ではなくて西本なんですよ。試合への出場もそうですし、契約、年俸についてもそうですよね。丸山に対しても加入したときに「実力順に出すからね、でもなるべく多くの試合に出したいと思っているし、そうなれる選手になってください。頑張ろう!」と伝えていました。
ですから、今回入る2名についてもそういう方針でやります。もちろん、選手の活躍を見たい選手個々のファンの声も分かります。ファンとはそういうもので、SNSでどれだけ言ってくれても構わないし、絵がうまい人は漫画にしてくれても構いません。でも、人気があるだけでは試合には出られません。目指しているのは勝つことです。我々は勝ちたいんです。
──1人の選手はだいぶ前にめどをつけたというお話でしたが、どういう選手を獲るのでしょうか。
実際に一緒にやってみないと分からないところがありますが、園田、たろう、もう一人の新加入女流選手と一緒に戦うことで、さらに飛躍的に強くなれるんじゃないか、それはその選手だけでなく4人共が、と思える選手です。そういうケミストリーを生み出す才能があるのではないかと。
そして、麻雀の選択において何が得かを正しく考えて、それが人と違う選択だとしても堂々とできる強さがあります。放送対局だからといって萎縮せず、人と違うことも含めて臆せずやれる、みたいなところは魅力的ですね。Mリーグだけではなく、このまま麻雀プロとしてのキャリアを重ねていったら、すごく強くなるのではないでしょうか。存在や選択が「ドリブンズらしい」選手だと思っています。
性格的な部分に触れると、ものすごい努力家で、相当探究心が強いと思います。麻雀というゲームに真摯に向き合っていることは伝わってきます。だからMリーガーになっても努力し続けると思いますし、そもそもMリーグに入ることがゴールではなさそうな選手です。どこまでも麻雀を探求していけそうなところはうちっぽいと思います。その選手がMリーグで、麻雀界でさらに飛躍していくことを期待していてください。
──女流選手はどういった選手を?
先ほども申し上げた通り、トライアウトを通じて1人の選手に決めました。テストの成績が優秀で、非常に論理的思考力が高い、聡明な女性です。麻雀としっかり向き合っていて、多くの引き出しを持つ選手です。
実は彼女はMリーガーになりたいと思っていたことはなく、今回のセレクションも悩んだ結果参加してくれたと聞きました、でも、麻雀がとても好きで努力し続けることができる選手で、性格も素晴らしく、3人の選手と共にクラブハウスでのいい空気を作り出せる選手になると思います。そして、今以上にもっと強くなるポテンシャルを持っている。とにかく期待しかないです。若い選手かどうか? それはわかりません。麻雀界に限らず、今の時代、幾つになっても若いですし、そんな質問しちゃダメでしょ(笑)。
──ドラフトでは、獲得する予定の選手を他チームに獲られてしまうこともあり得ます。
Mリーグの内情をお話しすることになりますが、選手獲得に関しては、少なくともウチは選手と事前交渉を行っています。何の話もしないでいきなり指名して、「いやいや僕は、私はMリーグに入りません。ドリブンズには行きません」なんてことになったら目も当てられないでしょ? ファンの方がどういう想像をしているかわかりませんが、ドラフトの前段階で話は決まっています。なので、ドラフト会議は結婚式なんですよ。もちろんそこでダスティ・ホフマンの「卒業」よろしく、他のチームにかっさらわれる可能性は理論上ゼロではありませんが、まずそんなことは起こらないと思っていますし、起きたら起きたで何とかします。
■チームの運営方針
──ドリブンズは、SNSなどでの発信が足りないという意見もあります。その点についてはいかがでしょうか。
Mトーナメントなどで他のチームが出場選手の告知をして「応援してください」とやっているのに、ドリブンズだけしていない、とか見ましたね。でもね、どの口が「村上頑張れ、丸山頑張れ」なんてできると思いますか? 気持ち的にはもちろん応援しています。4人全く同じに応援していますけど、そこは察してほしいんですよ。「言えないよ」と。
あと、個人的な考えですけど、僕はチームとして「応援よろしくお願いします」というのが苦手なんです。我々にできるのは、応援してもらえるように頑張って何かを見せる、そして結果を出すことだけで、ましてやチームとして、所属選手個人を「応援してください」っていうスタンスがなぁ、という感じなんですよ。偏屈ジジイみたいになってますけどね(笑)。
そもそもウチは控え室の様子をドリブンズのYouTubeチャンネルで全試合生配信していますよね。いつでも選手の話が聞けて、同じ感情を共にできる。他にも「ドリブンズアカデミー」というアカウントでは毎試合ごとに出場した選手の思考も速報している。
結構ね、トップランナーとして取り組んできている部分もあると思いますよ。Twitterで仲睦まじい写真を出すことだけがSNS活用ではないし、そういうのはたまにで良くないですかね? 僕らはアイドルグループになれないタイプなんですよ… とかいうと、また炎上しますね、これ。まぁどちらかというとロックバンドでいたいかな。うちのキャラクター的にそっち向き。ただボーカルがやたらインタビューで喋るロックバンドっていうのもあんまりかっこよくないな(笑)。
ドリブンズは色々なことを言われていますけど、正直な思いを言えば、人気に関しては他の8チームで分け合ってくれていい、ドリブンズは「ヒール」じゃないけれど、他のチームのファンからも「ドリブンズには勝たせたくない」と常に気にかけてもらえる存在になれば、それはそれでいいエネルギーになるのではないかと思っています。
ただ、ヒールたるチームはやっぱり強くあるべき。2年連続して予選落ちしているウチはそこが足りない。よく言えばチャーミング、普通に言うと「ダサい」んですけど(笑)、耐え難きを耐え、それで勝ったらカッコいいからそこを目指そうぜ、という感じです。Mリーグに1チームくらい、そういうチームがあってもいいんじゃないでしょうか。決して狙っているわけではないのですが。
──また、「ドリブンズは越山監督の独裁」と捉える人もいるようです。
「独裁」という言葉の定義が何かという話からしたいところですが、ドリブンズに限らずどこの組織でも最終的な決定は「誰か」が行いますよね。それがドリブンズの場合は監督である自分なので、それって言ってみれば、組織として当たり前のことなんです。
ただ、ドリブンズは僕と選手たちの年齢も近いですし、Mリーグが始まる前からお互いを知っていて、園田に至っては僕がうちの会社に引っ張ったくらいです。お互いの関係性はできていて、監督と選手は色々なことを話していますよ。今回も新しい選手をどうするかについて、園田・たろうにはずっと相談を重ねてきました。
──ユニフォームスポンサーを入れないのはチームの方針だと伺いました。
これまでに、色々なスポンサーから声をかけていただいたことはあります。ただ、そこでビジネスをと考えているわけではないんです。チームスポーツにおいてスポンサーを入れるのはもちろん色々な側面がありますが、経済的なメリットもあります。ウチはそれを今のところ求めていない。他のサポーターやファンの方同様にただ愛してくれればそれで十分です。
昔、サッカーのFCバルセロナはソシオ(会員)によって支えられていたので、ユニフォームの胸にスポンサーを入れていなかった。そのさらに昔、西武球場は堤義明オーナーの美意識でスタジアムの壁に一切の広告看板が入っていなかった。強がりを言うならば、今はそう言う感じです、ドリブンズは(笑)。
ただ、ドリブンズとしては麻雀ビジネスの進歩・進化・発展の形として、日本を代表するクライアントが麻雀界、麻雀チームにスポンサーとして入ってきてほしいと思っています。ウチじゃなくてもいいので。もちろん、リーグ協賛としては名だたる企業がスポンサーとして入っていますが、麻雀チームのユニフォームにも、これまでサッカーや野球、ゴルフなどの日本の人気プロスポーツを協賛してきた企業に入ってほしい。我々はその一番手を目指そう、と。
そうしたらまた違う側面で、麻雀業界の発展の証明にもなります。だからたくさん優勝して、人気ももう少し増やして、そう思ってもらえるようなチームになろう、それまでは我慢しよう、と言っているんです、チーム内で。
だって、もしそうなった時に他のスポンサーが入っていたら、入りづらいところもあるでしょう。既存のスポンサーさんに「どいてください」とも言えませんし。もちろん、今他のチームに入っている各チームのスポンサー企業を否定するつもりは全くありません。これだけはきちんと書いてくださいね、キンマさん。また批判されちゃうので(笑)。本当に素晴らしい関係性だと思います。
チームによって色々な方針があると思いますが、ドリブンズとしてはそこを目指している、というだけの話です。もちろん応援していただけるのはすごくうれしいのですが、お金に関しては必要なくて、お気持ちだけ受け取らせていただきます、ドリブンズとしてはそういう信念を持ってやっていきたいのです。
■ドリブンズファンに向けて
──ファンのお話がありましたが、今のドリブンズのスタンスを応援する、チームについているファンもたくさんいると思います。そうした方々に対し、チームとしてはどのような形で返していきたいとお考えでしょうか。
ファンの方々にも色々なニーズがあると思います。多様性ですしね。僕らで勝手に予測してターゲットを定め、そこに向けて何かをする、ということはありません。
ただ、「チームが勝ったほうが気持ちがいい」ということはチームを応援してくださる全ての人に共通していると思うので、今までと変わらずこれからも麻雀というゲームを追求していくことを、勝利のためにストイックにやり続けていきます。それがドリブンズらしさだと思いますしね。
その上で、僕らも人として応援してもらえたらうれしいという気持ちはありますし、東京だけでなく地方で応援してくださる方もたくさんいらっしゃるので、オンラインでファンと交流できる取り組みは行っていきます。
ここでも公平性に気を遣ってしまうんです。東京・大阪だけで、遠方で参加しづらいファンに申し訳ない。でも、コロナ禍もだいぶ終息しましたし、麻雀店という狭い空間でのイベントもやりやすくなってきたので、今年から復活したいと思っています。
あと、やはりファンの方も選手に会いたいでしょうし、選手もファンの方と会いたいというのはあるので、もし優勝して賞金をもらえたら、そのお金を使って全国ツアーとかをやってみたいですね。そう、ロックバンドみたいに小さなライブハウスを回りたいです(笑)。
先ほどのスポンサーの話で言えば、そういうイベントスポンサーとかはいいですよね。コンサートとかでも〇〇プレゼンツ、とかありますでしょ? そうすると色々なところに行って、色々な企画ができるな、と思います。
ドリブンズとしては、数は少ないし来年はもっと減っちゃうかもしれないな、とは思うのですが、ドリブンズを応援してくださるファンの皆さんがいることは本当に嬉しく思います。よくぞうちのファンになってくれた、と。もちろん選手に紐づいてファンになる方が大半だと思うんですけど、こんな癖の強いチームを、チームとして好きだといってくれる方もいてね、選手たちも本当に喜んでいます。
で、それでいいな、と。僕個人で言うと、長らくブランディングやマーケティングをやっているので、ビジネスとしてより多くのファンを獲得するための戦略戦術を練り続ける日々なんですけど、そうありたくないというか。これが独裁と言われるんですかね?(笑)。だけど数が少ない分、濃いというか、本当に嬉しい。その人たちのことは大事にしていきたいです。