途中まで安全牌もなく押していた因幡だったが、自身の雀頭であるを持ってきて迂回。
通っているを打った後。
新ドラのを引いて打。
これは一応待ちの形になってはいるが、自身で2枚使っている上、周りも使いたい真ん中の牌ということもあってアガリは相当厳しい。
因幡も、が切れないから一応とったテンパイ。
しかしこれが、とんでもない悲劇を生む。
流局間近の出来事だった。
テンパイで連荘ならまあ、と思っていたその瞬間。
あまりにも無慈悲に、残酷に。そしてあっさりと。
そのは天開の手元にやってきた。
乾いた力ない笑いの後……天開は静かに息を吐いた。
いったいいつになれば天開が笑顔で試合を終える日が来るのか。
この今シーズンの神域リーグが終わるまでに、天開が喜ぶ姿を見たいと、心から願っている。
南4局
天宮に、テンパイが入った。
カンを引いての、単騎テンパイ。
がドラだが、既に1枚場に出てしまっている。
それでも、天宮が選んだのはドラ単騎リーチ。
ソーズにくっついての多面張や、ピンズマンズにくっついての変化もあるが……それでは打点が足りないこともある。
であれば、他家の足も止めつつ、打点も確保できるドラ単騎リーチが最適解……。
……いや、もしかしたらそんなことすら関係ないのかもしれない。
効率や、成長した部分も大事。それは間違いない。
けれど。もっと大事なことを忘れてはいけない。それは、彼女の持つ根っこの部分。
彼女は麻雀中であっても、いつでも笑顔を忘れない大人気Vtuberであり。
そして、麻雀においては”ドラ”が大好きな――
”ドラゴンガール”なのだから。
トップに、ヘラクレス因幡はねる。
オリるところはしっかりオリ、押すべきところでしっかり押す。
メリハリのついた麻雀でトップを獲得。インタビューでも元気そうな姿を見せてくれた。
2位3位となった、多井と天宮。
南1局では多井に軍配が上がったものの、最後の親番は天宮にドラをツモられた形。
インタビューでは、
「たかちゃんおかしいなあ……あまみゃからロンできないと思ったんだけど……」
「今後の絆にヒビが入るかもしれない……」
「(天宮からロンしたこと自体は)嬉しくは、ないです」
「それぐらいあまみゃのことは大事に思ってます」
と、面白いやりとりが行われていた。
是非インタビューも確認してほしい。
神域リーグ前から続く、2人の絆があるからこそ。
南4局、天宮がをツモったあの瞬間。
虎視眈々とトップを奪い返そうとしていた多井に対して。
大好きなドラをびしっとツモって。
「どーだ!」って、無邪気にVサインなんかして。
「こりゃやられたわ」って苦笑いする多井が見えたような気がしたんだ。
引用元:【#天宮こころ】渋谷あまみゃずのたかちゃんとあまみゃさんが遊びます【多井隆晴】
最高位戦日本プロ麻雀協会47期前期入会。麻雀プロ兼作家。
麻雀の面白さと、リアルな熱量を多くの人に伝えるため幅広く活動中。
Twitter:@Kotetsu_0924