その丸太ん棒のような腕が、アガリ牌を引き寄せる。
丸太ん棒のせいで見えないが、タンヤオドラ2・赤1の2000/4000である。
続く南3局も
丸太ん棒のせいで見えないが、ドラ赤の1000/2000で切って落とし、トップ目でオーラスを迎える。
マンガンで再逆転となる松ヶ瀬からリーチが入った。
メンタンピン赤1、文句なしのマンガンである。
8回連続逆連対… デビュー以来の不調にまみれた松ヶ瀬だって勝ちたい気持ちは同じ。
どうしたってツモる手に力が入る。
リーチ棒を投げた後は、もう人知を超えた領域である。
ツモれ…!
ツモるな…!
もう祈ることしかできないのである。
屈強な男たちが、言葉を発さず、ただ1つのアガリ、ただ1つのトップに向け全力で火花を散らす。
0.01%の上積みのために麻雀プロたちは日々鍛錬を重ね、でも最後の最後のめくり合いでは神に祈ることしかできない。
そこに麻雀の虚しさと面白さが同居している。
結果、松ヶ瀬のリーチは小林のアガリの前に霧散し、1本場で醍醐が自らの手でアガり
昇天。
結果的に醍醐は南場で3回アガったのだが、私は手を崩した南1局の親番が一番印象に残った。
フェニックスがトップを取ったことで、またしても上下がぐっと縮まった結果に。
「コツコツマイナスを返していけばいい」
と簡単に言うが、麻雀はそうはいかないことを誰もがわかっている。
残り31試合。
迎える先は天国か地獄か。
リーチ棒を投げた後と同じで、ファンももう祈ることしかできない。
精一杯祈ろう、1つのアガリを。
その先にある勝利を信じてただひたすら祈ろう。
9チームあれば9チームのドラマがある。
毎年この時期に言っている言葉で締めよう。
Mリーグはここからが一番面白い。
麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で戦術特集記事を連載中。note「ZEROが麻雀人生をかけて取り組む定期マガジン」、YouTubeチャンネル「ZERO麻雀ch」