最終盤で、渋川にもう一度テンパイが入った。ただし、そこで出ていくかはいずれも無スジで、残りツモ回数は1回。一方、鳴いているのはなのでアガれるし、なによりテンパイして流局に持ち込めば逆転トップの可能性をつなぐことができる。次局にとんでもない手が入って瑞原を沈めることだって、あり得ない話ではない。
まだ、チャンスはあるんじゃないか。
画面に出ているように、松ヶ瀬の待ちはで、もも当たらない。
そもそも松ヶ瀬のリーチはフリテンである。
渋川だって、こんな選択をしたくてファイナルに来たんじゃない。
この試合だって華々しく勝利を飾り、控え室で仲間やファンたちと喜びを分かちあいたかったはずだ。
それでも今成すべきは、奇跡を追うことではなく、可能性をつなぐこと。
それがたとえ英雄になれない道だとしても、渋川はブレなかった。
悔しさを抱えながら舞台を去る者がいて、
無念を受け継ぎ、悔しさを乗り越えて栄冠へと突き進む者がいる。
あらゆる感情が渦巻くファイナルの果てに、
5月17日、優勝シャーレを手にするMリーグ6代目チャンピオンが決まる。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。