「うーむ…ダメだなこれ!撤収!」
手数は多いが、なかなか反撃のチャンスが巡ってこない。
我慢の展開が続く中、親番で石橋はついに好配牌を手に入れる。
と払って字牌の重なりを狙う手もあったが、なおもストレートに打とした。
この手はなるべくなら鳴きたくない!
と、そこに上家の松本からが飛び出してきた。
「チー!」
なら話は別、飛びつかずには居られない。
そもそもが出てくるということは、手の内にドラのを持っている可能性が高い。
なおかつ、打ち出してきた人の手はかなり早そうなのだ。
こちらも速度を上げていかなければ、親番を流されてしまう。
しかしまたも高宮からリーチ!
そして、沢崎からもツモ切りリーチが入ってしまう。
そこに引かされたのは、血のにじむような。
「また撤退かよ…」
虚無感が漂う目をしている。このあと再度テンパイするのだが、横移動であえなく親番が終了。
東場は常に点棒を払いっぱなしの石橋だった。
南場
再びラス目で迎えた南場。しかし、さっきまでとは流れが違った。ドラドラのチャンス手をもらう。
そしてサクサク両面が埋まり、スムーズに先制リーチ。
「これは行ける…南場は俺の時間だ!」
すぐに松本から追っかけリーチを喰らうも…
高宮の鳴きで流れたが松本の手に滑り込んだ。これを討ち取り、裏も乗って8000点。
心なしか、東4局に比べると顔の輝きが全然違う。自信に満ち溢れた表情をしている。
我慢に我慢を重ねて迎えたオーラスの親番。
期待を込めて開けた配牌は…あまり良いものではない。
しかし、戦いは僅差も僅差。降りるわけにはいかないのだ。
東場とは引きが全然違う。面白いように手がまとまっていく。
下家の沢崎がをポンしており、絞ろうか迷う局面だが…
「ここは俺の時間。邪魔はさせない!」
あくまでストレートに、そして強気に切り。
石橋と言えば「黒いデジタル」といった相手の心理の裏を突く戦術が得意だったが、セミファイナルでは封印しているように見える。
小細工無しの一発勝負。それもまた、石橋のスタイルだったのかもしれない。
そして8巡目、ついにテンパイ!
卓上に響くほどを叩き付け、単騎でリーチに踏み切った。
しかし、親リーチといっても簡単には逃がしてくれない。
カン待ちの沢崎がマムシのごとく喰らいついてくる。
まずは無筋の。
を切った石橋も、まるで熱いヤカンに触れたときのように手をビクビクさせている。