朝はちょっと心配だったけど、とにかく普段通りに笑っていたので安心した。
3人で寝室で暗算の続きをしていると、妻が入ってきた。
妻は子供と同じベッドで僕だけ下の布団だ。
娘の学校の話をしたり、暗算の続きをまたしたり遊びは続いた。
そのときーー
「パパ、ママとしゃべって」
突然息子が言った。
あっ。
家に帰ってたくさん遊んで、たくさん笑った。
だが、分かっていたのだ。
僕が帰ってから2時間、最初は遊びに夢中だったが少しずつ違和感みたいなものを感じていたのだろう。
もちろん朝の喧嘩も覚えている。
そして妻と僕が一言もしゃべらないことを少しずつ把握したのだ。
5歳なのに
敏感なんだな。
言うタイミングも探してたんだな。
ーーーごめんな。
ごめんな、息子よ。
「朝はごめんね」
とりあえず妻に謝った。
「うん」
妻は一言言った。
娘が「えっ何の話?」
と入ってきた。息子が説明する。娘が興味深く聞く。
僕と妻も黙って聞き、僕はもう一度謝った。
1978年広島県生まれ。東京大学卒業後、竹書房に入社。近代麻雀戦術シリーズでさまざまな作品を世に出しつつ麻雀最強戦実行委員長をつとめる