ぶつかり合う「理」と「理」…… ゼウスたろうが見せた”理詰めの未来視”とは #麻雀最強戦2022 【男子プロ理詰めの極致】観戦記【A卓】担当記者:渡邉浩史郎

この仕掛けを受けて、たろうはアシスト気味に【8マン】を抜く。

567の三色で高打点になった時はアガるということもあり、この形。

早めのアシストは必要牌が絞りにくくはあるが、終盤では聴牌を入れておかないと村上との聴牌ノーテンで敗退の危険性があるため、余り自由にアシスト牌を選べない。面子中抜きでアシストという自由ができるのもこの早い巡目だけという判断だ。

園田の思惑通りに親のたろうが一歩引いた。後は園田、聴牌してアシストを受けるもよし、このまま手が進まなければ降りるもよしの形だったが……

それを阻んだのが村上。園田の切ったこの【7ソウ】

チーして打【北】!! タンヤオのみの直撃では逆転にならない。ではこの仕掛けは……?

そう、先ほどの園田の仕掛けに対してのアンサーである。

「賢ちゃんがたろさんに手を組まないように仕向けるなら、俺は手を組むように仕向けるよ」

このままでは聴牌した園田にたろうさんが面子から中張牌を連打。一瞬で終わりかねない状況であったが、この村上の仕掛けで一変。

たろうの差し込みが失敗して聴牌を取ることができなかった場合、流局で村上逆転という未来予想図をたろうに突きつけたのである。

もちろん朝倉からリーチ棒が出ての300・500ツモや1000点直撃もある。しかし……

この園田のチーで聴牌濃厚と見た村上は……

出た【2ソウ】をチー。形式聴牌の仕掛けを入れた。

瞬間アガリでの逆転はあきらめたが、たろうの面子中抜きにリスクを負わせることで次局へつなげる村上捨て身の仕掛け。

これを受けてたろうはアシストに回れず、ソウズを567でチー。このカン【6マン】三色聴牌に取る。

この【6マン】が村上から出る。鳴き三色のみ、1500は直撃で3000点差が開く。

今ある点差を5200に広げて一旦仕切り直しかと思われたが……

理詰めの極致!! チーして打【9ピン】!!

仮にこの【6マン】をアガった場合のオーラスを想定してみよう。

園田  40100
村上  22200
たろう 27400

たろうはノーテンで伏せられるので一見有利に見えるが、注目すべきは園田と村上の関係。

園田は村上に12000は12300を打ってもたろうより下に行かないので通過。つまり次局、村上の仕掛け・リーチに園田は全力でアシスト・差し込みに向かう。

その状況での通過率は、果たして現在の状況を維持したままより高いであろうか?

現在の状況を維持すると、次局にもつれ込んだ時には2200と伏せられない点差という点で不利だ。

しかしこの局に園田がアガるのであれば話が変わる。園田がアガればたろうは問答無用で通過。この局の村上はほとんどアガれる見込みがない仕掛けもしてくるという共通認識があるからこそ、たろうにはこの【6マン】をアガらずに園田に託す未来があるのだ。

まさに牌を通じた会話。条件戦だからこそ生まれる至極の選択といえるだろう。

そしてそんなたろうの選択、ゼウスの未来視は……

完璧な未来予想図として、実現した。

決勝進出は鈴木たろう園田賢!!

半荘一回でこれだけ濃厚な条件戦の妙を味わえたのは、まさに理詰めの極致といったところだろうか。今回は園田・たろう両名に女神がほほ笑んだ。決勝でもその卓越した雀力で理詰めの神髄を見せてもらいたいところだ。

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