親の黒沢、リーチを受けて一発目。
を引き、の筋のを打つかと思っていたが、まずは現物のから。
そう。
まず、現物のを切れたのだ。
実はこの局。
西家の伊達の捨て牌に注目してほしい。
マンズが5321と並んでいる。
はツモ切りの後、手から、ツモ切り、手から。
これが何を意味するか。
瞬間に必ず伊達の手にはマンズがという形になっていたということ。
しかもそこからカンチャンターツをという払い方をしている。
まず大前提にターツは足りていることが多い、かつ、残っている形もカンチャンよりもいい形と見ることができる。
それすなわち!
『早いかつ、良形』
そんなマークをしていたからそ、黒沢は伊達に安全牌であり手牌変化にも対応できるを残した。
のペンチャン選択も、はどちらも伊達に打ちづらいことと、は比較的打ちやすいという理由で、ギリギリのタイミングでを切ることに成功している。
『危険察知能力の高さ』
黒沢の守備が光る。
13巡目。
三段目に入り、残りツモ番も少なくなってきたが、を引きイーシャンテン。
ここからだ。
ここから、黒沢の真骨頂である、〝リードは守る為じゃなく広げる為にある〟を教えてくれるかのような攻めが見られるのは。
真っ直ぐと打ち抜いたは黒沢の場合、卓上に燃え上がる炎というより、光輝くダイヤモンドの煌めきという方がしっくりくる。
現物はしかなくその牌を抜いて降りる選手も少なくない。
あるいはイーシャンテンを維持して筋のを打ち、テンパイしたら勝負。
50000点持ちのこの状況下、このどちらかになる選手が多いだろうと思っていた。
ただ、も筋なだけで、捨て牌も上目(789)の牌が1枚も切れていないことから、789の三色だって否定されてない。
を切ったら自分の加点は厳しくなる。
オリ打ちだってある。
頭では分かってる。
でもなかなか押せないこのを押すから黒沢は今まで勝ってきているのだ。
2度目の特技ドラ(赤)引き発動でテンパイ。
待ちは。
が雀頭でテンパイしている麻雀プロが一体何人いるのだろう。
『これが私の歩んできた道だから』
示してくれたトッププロの一打は、これから麻雀を始めるすべての人や、強くなりたい麻雀プロに夢と希望を与える一打になっていると筆者は感じた。
を一発でツモり6000は6200オール。
こうして黒沢はこの半荘トップで終了。
チームもプラス三桁に再び戻る、終盤戦の大事な一戦をモノにしたのだ。
試合後黒沢はインタビューでこの局のことをこう語っていた
『打ちたくない気持ちはあったけれども、しっかり勝負して一回打つまでは行こうかなと思っていた』
どれだけのプレッシャーの中戦ってるかはMリーガー32人じゃないとわからない。
けれども選手はみな自分の信じた麻雀でファンの皆様に麻雀の素晴らしさを伝えているんだなぁと改めて思わせてくれた1局だったのは間違いない。
さぁいよいよレギュラーシーズン最後の3分の1に突入。
麻雀は勝ち負けがある競技である。
だからこそ選手もファンも一喜一憂する。
敗者がいるから勝者がいる。
この言葉を忘れず、駆け抜けるレギュラーシーズンを筆者も解説という立場で見守っていきたい。
最高位戦日本プロ麻雀協会。
A2リーグ所属。
選手、解説、実況、司会など唯一無二のマルチプレーヤー。
『麻雀グラップラー』の異名を持つ。
Twitter:@corn708