これを受けて、歌衣は冷静だった。
「親のあまみゃがテンパイに向かってるから、俺は我慢。振ったら終わりだからね」
先ほどとは打って変わって、あまりにも冷静な判断。
今自分の手はアガリには遠く、打点もない。
ならば天宮にテンパイをいれてもらって……自分はオリた方がトップの確率が高いと踏んだ。
歌衣の我慢が実るか。
白雪の意地か。
開幕戦の、結果は――
「一旦、頂いておくか……前回残しておいたから」
白雪が噛み締めるように。ゆっくりと、去年の忘れ物を拾いあげた。
トップはチームアキレス、白雪レイド。
去年のチームメイトでMVPの歌衣メイカを抑えての嬉しい神域リーグ初トップとなった。
天開は終始厳しく、当たり牌を掴んでしまうシーンも多くみられた。悔しいラス。
天宮は随所でアガリと、無理はしない引き際も見事で、素点を大きく持った3着。
手があまり入らなかったことを考えれば、十分な結果ではないだろうか。
インタビューでは、嬉しそうに白雪が歌衣からの煽りを返していた。
昨年までのチームメイトということもあり、このあたりのやりとりも慣れたやりとりに見える。
ついに始まった神域リーグ2023開幕戦は、白雪が制した。
去年チーム優勝という最高の結果を手にしながら、それでも個人として悔しい結果に終わった白雪。
去年優勝を掴み取った瞬間叫んだあの言葉。
あの時は、ボロボロになりながら叫んだけれど。
今なら、胸を張って言える。
「ありがとう神域リーグ!」
さあ、あと何度でも。
その喜びの声を聞かせてくれ。
最高位戦日本プロ麻雀協会47期前期入会。麻雀プロ兼作家。
麻雀の面白さと、リアルな熱量を多くの人に伝えるため幅広く活動中。
Twitter:@Kotetsu_0924