【 #神域リーグ2023 第一節第1試合観戦記】白雪レイドが戦友(とも)に送る 去年残した忘れ物【文 #後藤哲冶 】

「これは狩りに行く【4マン】【7マン】

白雪のナイフが、歌衣の喉元に突きつけられる。

出アガリにこそならなかったが、白雪のツモアガリ。
これで歌衣をかわしてトップ目に躍り出る。
去年の忘れ物を取り返すまで、あと、少し。

南3局 

先制リーチは天宮。
カン【3ピン】のリーチドラ1は、ツモって裏を乗せればまたトップ争いに参加できる。

これを受けた歌衣の手牌は、この状態。
遠くに高い手が見えるものの、先制リーチを打たれたら流石に手が遅すぎる。

「オリか……」

ここは南4局のアガリにかけて、歌衣は安全牌の字牌に手をかける。
これは正しい判断だと思う。流石にここから追い付いてアガリまでは厳しい。無理に手を進めても、点棒を失うことになってしまうケースが多い。

次巡、持ってきた【北】

「まずい」

……え?

「行きたくなっちゃう」

まてまてまてまてまて茶。
落ち着こう歌衣。確かに手牌はメンゼンホンイツチートイツのイーシャンテンと言えなくもないが、浮いている【2マン】【6ピン】は共にリーチに通っていない。
流石にここからは……

「まずい! 行きたくなっちゃう!」

ああ、ダメだ。歌衣さんの悪いクセが。
大物手が見えると途端にブレーキがぶっ壊れる悪いクセが……

更に親の天開からもリーチ。

「ああ、無理無理。こんなの行けるわけないよ。【6ピン】通ってないし? 流石にね?」

うんうんうん。そうだよね?
じゃあとりあえずいつまでも【6ピン】に合ってるカーソル一旦外そうか?

【7マン】……ああこれは流石に。【北】切ろう」

流石に歌衣も2人に通っていない【6ピン】は無謀と判断し、【北】に手をかける。

……【6ピン】押せなくて残念そうに感じたのは僕だけですか?

ここは天開が【3ピン】を掴んでしまい、天宮へ2600点の放銃。
天開は最後まで厳しい展開が続く。これで親番が落ちて着アップがかなり絶望的になってしまった。
勝負は、南4局へ。

アガればトップの白雪が、【8ピン】をポンしてドラの【2ピン】切り。
この辺りの仕掛けはぬかりない。もちろんラス目の天開や親の天宮、それに歌衣だってリーチを打って出ることはある。
その時に手牌が短いのは心もとないが、白雪は知っている。最速のアガリこそが、最大の防御になると。

そして余剰牌の持ち方も上手い。
タンヤオのブロックはもうできているので、余剰牌は親の天宮の現物【9ソウ】と、全体に安全度の高い字牌の【中】
このあたりが白雪の仕掛けの精度を支えている。

【8マン】をチーして【中】切り。
手牌が全て危険牌なため、ここは【4マン】を切って【中】を残したくなるところだが、そうしなかった。
全力でアガリに向かう。文字で書けば簡単なことだが、実際にやるとなるとそう簡単ではない。
これでラス目の天開のリーチに放銃して2着落ち、なんて未来もあるからだ。
そのリスクを背負ってでも――

この【8ソウ】ポンは逃せない……!
アガればトップのテンパイに、白雪がたどり着いた。
全力のタンヤオ仕掛け。
去年の忘れ物は、もう目の前まで、手の届くところにある。

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