赤坂ドリブンズは新たな選手として、「天鳳」でトリプル天鳳位、「雀魂」でダブル魂天と、ネット麻雀の世界で伝説的な実績を残した渡辺太(わたなべ ふとし)を指名した。麻雀プロとしてのキャリアは浅いが、その実力は既にトップクラスにあると業界内での評価も高い。未知のフィールドであるMリーグに臨もうとしている、渡辺プロの声をお届けする。
──まず、今回の指名を受けることが分かったときの気持ちからお聞かせください。
率直に、すごく驚きました。飲み会のような場で、越山監督、園田さん、たろうさんと4人で会ったんですけど、そこで「ドリブンズに入ってくれないか」という話になりました。その時はまだ「候補に挙がっているのかな」くらいのことだと思っていたのですが、配信対局とかでの自分の麻雀やインタビューを評価してくださったそうで、そういった部分を見てくれていたのもすごくうれしかったですね。
──アマチュアのときから「いつかはMリーグで」という気持ちはあったのでしょうか。
ネット麻雀歴が10年以上になるのですが、プロになろうと思い始めたのは天鳳位を複数回獲ったくらいの時期からなので、3、4年くらい前から漠然とした憧れはありました。そのときは仕事との兼ね合いもあって具体的な動きはなかったのですが、社会人として働いていく中で麻雀に対する思いがどんどん強くなっていって、それが積み重なってプロ入りを決断したという形です。プロ入りについては昨年の11月末くらいに最高位戦の方に相談して入会検討の場を設けていただいたので、ここ半年くらいの動きです。
ただ、Mリーグ入りの話があったからプロ入りしたわけでは全くなくて、今回の件に関しては自分が一番驚いています。もちろんプロ入りしたときからMリーグを目指したいという気持ちはあったので、Mリーグ入りに向けて地道に活動していきたいとは思っていて、そこにお話をいただいたという感じでした。
──赤坂ドリブンズに対しては、どのようなイメージをお持ちでしたか。
全チームの中でも勝ちにこだわっているというか、結果もそうですけど過程、麻雀そのものを見てほしいというカラーが一番強いチームだと思っています。純粋に強さを求めているところが魅力的に映っていたので、ドリブンズから声をかけていただいたのはすごくうれしかったです。
──渡辺プロはトリプル天鳳位・ダブル魂天という称号を持っており、ありふれた表現で言えば「ネット麻雀最強」と評されると思います。ネット麻雀を代表して戦う、という気持ちはあるのでしょうか。
たぶん世間からはそういう目で見られていくんだろう、というのはありますが、まだそこまでのプレッシャーというか、自分が負けたらネット麻雀界がダメに見られる、という重圧は特にありません。それがまだなのか、これからも出てこないかは分からないですけど。
──ネット麻雀のコアなファンからの、渡辺プロを応援する声は大きいと思います。
もちろんそういう応援の声はありがたいものとして受け止めつつ、あくまで一個人として見てもらえるように活動していきたいと思っています。
──Mリーグは、渡辺プロがこれまで主戦場にしてきたネット麻雀の世界とは異質のフィールドだと思いますが、そこで打つことに対してはいかがでしょうか。
まず、自分はリアルの麻雀も結構打つほうでして、ネット麻雀の段位戦のようなラス回避に特化した打ち手ではない、と自分では思っています。Mリーグもかなり見てきていますが、そのときも別のルールの麻雀ではなく、同じ麻雀として見ていた感じです。
Mリーグで打つことに対してですが、自分は元々オカありルールとかでも普段のネット麻雀の打ち筋とそんなに変わらずにやってきていましたので、現状では今の打ち筋をフィールドに合わせて極端に変えることはないと思っています。
──Mリーグの舞台で、ご自身の麻雀のどういうところを見てほしいですか。
麻雀ではハイリスクハイリターンみたいな局面でリスクを回避したい気持ちに寄ってしまうことが多いと思いますけど、大胆な選択だとしても少しでもそちらが得だと思うなら、そういう選択を取っていきたいと思っています。自分の中での基準はある程度確立されていますが、その基準がたぶん、現代麻雀におけるセオリー、将棋でいうところの『定跡』のような部分と一致していないところがあるので、その違いを見ていただければ楽しめるのかな、と思います。もちろん私自身もまだMリーグの舞台に立ったわけではありませんし、実際に経験することや先輩方との勉強会などで得るものも大きいはずなので、Mリーグでの経験を糧にして、さらに成長していきたいと思っています。
──麻雀とは関係のない話ですが、ドリブンズではかつてディナーショーやクリスマスイベントなどをやっていて、選手もコスプレをしていましたが、そういうのはいかがですか。
ファンと近づけるイベントをやるのは魅力的だと思います。コスプレとかも、求められれば抵抗は特にないです。
──最後に今後への意気込みと、既存のドリブンズファンや、これからドリブンズの渡辺プロを応援する人へのメッセージをいただけますか。
まず、勝ちにこだわるドリブンズというチームに自分を指名してもらえたことを、とてもうれしく思っています。そういった理由で指名していただいたからには、チームの勝利に貢献できるように、麻雀に真摯に向き合っていきたいと思っています。
ネット麻雀時代の自分を知ってくださっている方に応援していただくのもとてもうれしいですし、これまでのドリブンズのファンの方にも自分の麻雀を認めていただけるように活動していきたいと思いますので、ぜひ応援していただけるとうれしいです。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。