夏の終わりに現れた救世主。
俺がやらねば誰がやる!
文・小林正和【金曜担当ライター】2023年10月6日
記録的な暑さが続いた2023年も次第に秋風を感じる季節に。しかし浜松町にあるここMリーグスタジオの中は、少し長めの夏休みが続いているかのように真夏の熱気で満たされていた。
第2回戦
下位に位置する同士との戦いとなった対戦カード。まだまだ序盤ではあるが、特に渋谷ABEMASやEX風林火山に至ってはマイナスポイントが三桁を超えている。是が非でもトップを持ち帰ってきてほしいと多くのサポーターが見守る中、今シーズン初登板となった選手がいた。
渋谷ABEMAS “絶対的エース”多井隆晴である。
「優勝チームは翌年ファイナル進出を逃す」という学校の七不思議のようなジンクスを打ち破り、連覇を目指す王者がスタートから思うように波に乗れない。
そんな苦しいチームを救うべく満を持して登場。夏休みの宿題を先に終わらせた少年のような笑みを浮かべながら最高峰のステージへ歩んで行った。
ここまでの温存作戦は監督の意向によるものだったが、そのベールに包まれた多井2023ver.がいきなり見え隠れしたのは東1局
打点十分な親の先制リーチ。場面だけ切り取ると違和感のない光景ではあるが、よく河をご覧頂きたい。何とが4枚切れではないか。
ダマテンやテンパイ外しなども視野に入る中、今シーズンの多井はリーチなのである。
そして、その意図の答え合わせは終局間近に照らし合わされた。
15巡目、猿川に単騎テンパイが入るとが捨て牌に選ばれる。
ここで全体図を見てみよう。
は通っておりがリャンメンで当たる場合はのケース。しかし、リーチの時点で既には枯れているのだ。
(4枚切れでリーチに来るのか!?…)
対局後の舞台裏インタビューでは、その思考もあったと語った猿川。しかし、痛恨の12,000点放銃となってしまう。
「多井やってんな!」
そんな視聴者のコメントを誘うような立ち上がりとなった。
次局も2,000は2,100オール。ファンの期待に応えてゲームメイクを構築し、最速最強の風格も漂う。
しかし、歯車が噛み合わなくなったのは東2局
メンホン・イーペーコーの待ちの強烈なダマテンを入れた多井。そして狙い目であるが脇に流れるが、その行先は皮肉にも内川幸太郎であった。
内川と言えば過去シーズン、黒沢に放銃した四暗刻単騎待ちが記憶に新しい。
それがフラッシュバックしたかどうかは定かではないが、見事にを手の内に収めると決定打を阻止した。
しかし、内川のファインプレーによりこの局チャンスが生まれたのは瑠美であった。
終局間際にダブ1,300オール。
このアガリをキッカケに多井に追いすがる。
そして現状最下位に沈む厳しいチーム事情の中、プレッシャーを感じさせない瑠美の表情も武器の一つだ。
(うん…夏休みの合宿先でスネている子供のような良い表情である。)
その喜怒哀楽に満ちた、苦しさを感じさせない瑠美の思いに牌が応えたのは南2局であった。
リーチ・ツモ・赤2・裏2
6,000オール
EX風林火山の希望の星。正に疾風のごとく、会場に熱風を吹き込む瑠美らしい華やかなアガリとなった。
こうなると展開も瑠美に微笑む。
南2局1本場
猿川が4着回避に向けて、多井からダマテン8,000点を出アガると南3局には
“モンキーマジック”
ドラの単騎リーチを一発でビーストしてのハネマンツモ。3着へ浮上して対局を終えた。
たかはる少年はインタビューの席で