少しだけ時間を使って、茅森は今の形での勝負を決断した。
今シーズンの茅森は、とにかくリーチに恵まれなかった印象がある。好形リーチの待ちが山にない、数的優位で競り負ける、そんなことが一度や二度ではなかった。
それでも、茅森はいつだって冷静だ。そして自分を信じて戦う。そんな彼女を、いつだってファンは応援してきた。
そんな声が、もしかしたら聞こえていたのかもしれない。
それは、山に残った最後の1枚だった。
その牌を、茅森は噛みしめるかのように手繰り寄せた。
リーチツモ赤赤、逆転トップ。
満足のいく手変わりも、裏ドラもなかった。
つまりこれが、逆転への最短ルートだった。
対局場が、1ヵ月ぶりにフェニックスのオレンジに染まった。
不死鳥は、炎の中から蘇るという。
一つ勝ったとて、チーム状況が苦しいのは変わらない。
でも、ここからだ。
冷静さの中に青白き炎を宿す天才が、フェニックス反撃の狼煙を上げた。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。