不死鳥は青き炎から
再び飛び立つ
茅森早香、
オーラスの逆転劇
文・東川亮【月曜担当ライター】2023年11月13日
大和証券Mリーグ2023-24シーズン、セガサミーフェニックスが苦しんでいる。
10月13日の魚谷侑未のトップを最後に、1ヵ月間トップがない。道中には5連続ラスも喫し、チームは大きくマイナスした最下位に沈んでいた。
この日の初戦に出場した醍醐大も3着。レギュラーシーズンはまだ1/3も消化していないが、マイナスは500に達そうとしている。展開が向かない、不運に見舞われているところもあるが、もちろんこのままでいいはずがない。
第2試合には茅森早香が出場した。彼女自身も、今シーズンはまだノートップと苦戦が続く。いつもと同じようにクールな雰囲気で卓につく彼女だが、何よりもチームのために、トップを持ち帰りたい気持ちは強かったはずだ。
第2試合
東家:滝沢和典 (KONAMI麻雀格闘倶楽部)
南家:松ヶ瀬隆弥 (EX風林火山)
西家:茅森早香 (セガサミーフェニックス)
北家:中田花奈 (BEAST Japanext)
東1局、茅森は2巡目に切っていたを引き戻すと、を切って目いっぱいに受けた。現状、を残したところで1300点の手が2600点になるだけで、受け入れは狭くなる。打点が見えないならばと、ここは受け入れを最大にとってアガリを目指した。
その後、テンパイしたところで中田のリーチとぶつかるが、引き勝って400-700のツモアガリ。
次局はの暗刻からをリャンメンでチーしてテンパイを取り、松ヶ瀬から1000の出アガリ。
連続のアガリで迎えた親番では、真っすぐに手を組んでピンフ赤のリーチをかけ、滝沢のリーチ宣言牌を捉えて5800の出アガリ。3連続の加点で、少しずつリードを広げていく。
Mリーグ初年度の個人表彰だった平均打点のタイトルを獲り、一撃の重さから「打点女王」という呼び名もある茅森だが、実は今シーズンの平均打点は現時点で全Mリーガーのなかで最も低い。
それだけ手が入っていない、高打点が実っていないと言えるが、茅森はそこで無茶をせず、今できることをたんたんとやり続けている。それが勝利に近づくと信じているからだ。
ただ、麻雀は1人でやるゲームではなく、必ず相手がいて、勝利を目指してくる。この試合で茅森の前に立ちはだかったのは、開幕から上位をキープし続けているKONAMI麻雀格闘倶楽部の滝沢和典。
東3局1本場、滝沢はターツオーバーの形の1シャンテンから、東をポンしてテンパイを取れる形にはせず、カン7sターツを嫌う8s切りとした。すでに1枚切られている7sに頼らず、マンズを厚く持ってよい形を作ろうという狙いだ。
この選択がハマって、と引き入れてテンパイ。
滝沢は、ではなくのシャンポン待ちに受けてリーチをかけた。見た目の待ち枚数よりも打点を追った一打。前局の放銃による失点も、この選択を後押ししたという。
終盤間際にツモり、安目とは言えテンパネして1300-2600は1400-2700。効果的に加点し、2着目に浮上する。
南3局には、2度目の1300-2600ツモ。滝沢が同点で並んでいた茅森に親かぶりをさせ、7800点の差をつけた。
点数を払いながら、茅森が一瞬表情を変える。しかし、すぐに冷静に戻り、条件を整理した。1300-2600ツモでは届かない、狙うのは満貫。
もちろん、手が入らなかったら、あるいは敵に手が入っていたら、それまでだ。今シーズンは厳しい展開が続いていたし、嫌なイメージもあったかもしれない。それでも、今は逆転を信じて戦うのみ。
配牌を開ける。2メンツに赤が1枚、ドラが發で手に1枚。
OKだ。これなら可能性を追える。
もう1枚赤が来たなら、もう孤立のはいらない。目いっぱいの1シャンテンに構える。
テンパった。待ちのカンは場に1枚切れ、上家の松ヶ瀬、下家の中田はマンズを切っておらず、山の残り枚数は読みにくい。
そして滝沢以外からの出アガリの場合、このままのリーチでは5200止まり、一発や裏ドラが絡まなければ逆転には至らない。
ソーズの連続形を生かした好形テンパイを狙って、一度を切る選択もあった。
だが、今のテンパイを外したとて、望み通りに変化するとも限らない。
局も中盤に差し掛かり、手をこまねいている間に追っ手が来てチャンスをつぶされるのが最悪だ。
だったら・・・。