”読み”が、どこまで”期待値”に影響を与えられるのか。論理と数理の狭間で園田賢が投じた赤い一石【Mリーグ2024-25セミファイナル観戦記 4/24 第1試合】担当記者 渡邉浩史郎

先ほど説明したように、園田の読みではマンズまわりはかなり手牌に使われていると推測している。おまけに単純な【5マン】切りリーチでは、【3マン】【6マン】は勝負手の人からしか切り出されないだろう。

では【赤5マン】切りではどうだろうか。【9マン】【赤5マン】と切った人間に二枚切れの【6マン】が当たるケースはほとんどない。単騎・シャンポン・両面・カンチャンのいずれも通常であれば当たらないからだ。
【3マン】だけはシャンポンとペンチャンのケースがあるため、止まる場合があるが、【6マン】はほとんど大通しと言っていい。この事実は園田側からすれば、「【赤5マン】切りリーチであれば高めの【6マン】の出和了り率が大幅に上がっている」と言い換えることができる。

整理するならば

事実
【赤5マン】切りリーチは打点を下げる
【赤5マン】切りリーチは【6マン】出和了り率を上げる

園田の読み
【3マン】【6マン】は山に薄いのではないか
・竹内・松本の手が整っていそうなため、押し返して来るのではないだろうか
→山に薄いと思う両面で捲り合うよりも、出和了り率を上げたほうが結果的に失点を抑えられるのではないだろうか

打点と和了り率を天秤にかけ、園田はこの【赤5マン】切りを敢行したのである。

しかしここで園田が戦っている葛藤がある。それは自身の読みがどこまで当たっているかという問題である。
特にスピード読みはまだしも、山に残っているかいないかは黒沢という未知数xの存在や単純な読みはずしも含めて、【5マン】切りリーチと比べて大きく期待値を損ねる要因と言えよう。

赤切りリーチは出和了り率を上げるために打つもの。言いかえれば「山にいる待ちならば、赤切りリーチをする意味があまりない」。

実際に園田もこの待ちが四枚いることは予想外であり、そのために大変見栄えが悪くなってしまったとの言を試合後の配信で語っている。

自身の”読み”が、どこまで”期待値”に影響を与えられるのか。園田の魔法はそれを追い求めていくもの。

今日の魔法は失敗に終わってしまったが、奇跡の大魔法には失敗もつきものである。
”麻雀”という圧倒的な存在を紐解くために、園田が投じた赤い一石。その波紋はいずれ世界を変えるだろうか。

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