その男、名は内川幸太郎。真紅の赤伍萬は烈風に乗って。【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 9/30 第2試合】担当記者 カイエ

その男、名は内川幸太郎
真紅の【赤5マン】は烈風に乗って。

文・カイエ【火曜担当ライター】2025年9月30日

◆ある男

その男は、新規チームのドラフトでMリーガーに指名された直後、自団体のリーグ戦で「サクラ色の【中】をツモって」国士無双を和了した。

その男は、赤牌の保有率が高いということから、赤川さんと呼ばれることがあった。

その男は、劇的な展開で勝ちきるシーンが多いことから、根っからのヒーロー気質であり、主人公体質であると言われた。

その男は、YouTubeで720万回再生されている「【西】」での振り込みにより、本来は被害者の立場であるにも関わらず、主役級の目立ち方をし、飛躍的に人気を高めた。この「事件」は2020年の出来事だったが、後にCMにもなり(仕方ないコツコツやるか)、5年後の今もなお擦られ続ける、Mリーグ史に残る「ネタ」にまで昇華していた。


その男は、KADOKAWAサクラナイツのリーダーであり、エースだった。闘牌だけではない。対局後のインタビューやセレモニーにおけるスピーチでも、常にMリーグ全体・麻雀業界全体のことを踏まえた大人の発言と持ち前の責任感で、人々を感動させ、いつも場を引き締めていた。

その男は、人格者だった。

その男は、対局中も目を見開き、鬼気迫る表情で闘牌し、時にガンギマっていると形容されることもあった。表情が豊かで、ハンサムで、とても画になる男だ。

その男は、控室でもチームメートを鼓舞し、病気療養で年長の沢崎誠(日本プロ麻雀連盟)が離脱した後も、若いチームを引っ張っていった。

これで負けがなくなったと安堵する監督と岡田紗佳を「勝たなきゃダメなんだ!」と強く諫める。すると、ふたりは同時に「そう!」と返し、チームメートへの応援の熱と祈りを再充填する。
直後に堀慎吾【1ピン】をツモり、すでに監督とおかぴは溢れる涙を止められない。

局面は、事実上の優勝が確定し、いわゆるウイニングラン。
控室から対局場の近くまで移動したチームの面々。岡田の号泣は、止まらない。
実況の日吉辰哉の声が、モニターから流れてくる。

桜のように美しく
騎士(ナイト)のように心技を兼ね備えよ
不易流行の志を未来へ
朝日新聞Mリーグ2021-22ファイナルシリーズ
チャンピオンチームはKADOKAWAサクラナイツです

Mリーグの歴史でも、屈指の名シーンであり、名実況だ。

その男は、そう、サクラを代表し、体現する騎士(ナイト)だった。

その男は、しかし、サクラナイツ悲願の優勝の瞬間、卓に座ってはいなかった。大一番の最終戦を託されたのは、前日に足の骨を折っていた堀だった。

主役は、センターにいるはずだ。
ヒーローは、中央にいなければならない。
エースは、優勝の決まる大一番に牌を握っていなくてはならない。

この時、すでに「終わり」は始まっていたのかもしれない。
それでも男は、その後もサクラナイツというチームを陰に陽に支え続けてきた。

だが、2年目にはMVPを争う活躍を見せていた男も、2023-24シーズンから2年連続で結果が出なくなっていた。2024年オフには、チームメートの堀に教えを乞うかたちで検討配信を公開し、年下の新エースから、時に厳しいダメ出しを受けもした。

そして2025年。
その男は、サクラナイツを去った。
それは、オフシーズン最大の事件だった。何もかもが、あまりに唐突に思えた。
サポーターや世間の喧噪の裏で、その男は、謎の「ミスターX」となっていた。
Mリーグ参入以来、ずっと目立ってきた主役級の男が、西川さんが、赤川さんが、ハピ太郎が、遂に匿名の存在になってしまったのだった。

2025-26シーズン。
その男は、赤と黒を基調としたユニフォームを纏って、われわれの前に姿を現した。

◆その名は、内川幸太郎

Mリーグのオフシーズンには、世界チャンピオンの称号も手にした。
風林火山の新メンバーとして2連勝中の男が今宵、対峙するのは、

第2試合

東家:内川幸太郎EX風林火山
南家:堀慎吾KADOKAWAサクラナイツ
西家:石井一馬(EARTH JETS
北家:園田賢赤坂ドリブンズ

話題の中心は自然、東家と南家の上下(かみしも)に注がれることとなった。
かつてのチームメートとの闘い。因縁の対決。
Mリーグ初顔合わせの一戦の、いま幕が上がる。

南4局

内川のトップ条件は、満貫ツモ。

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