
その後、伊藤と浅井も粘りを見せ、現実的な逆転条件まで迫ったが、最終的には森山が300-500は500-700の和了で終局。森山がファイナルへの切符をもぎ取った。

浅井の後悔、森山にとっての「魅せる麻雀」
対局終了後。試合を終えた選手に直接話を伺おうと楽屋前で待機していると、興奮冷めやらぬ様子の浅井が、解説の園田プロと何やら会話しながらむかってきた。
その中身を聞くと、浅井はとある「後悔」を口にした。それはオーラスの切りでもなく、さらに遡った東2局のことだ。
ドラのも抱え、チートイツドラドラの和了に向けて進行していた浅井。
をもってきた場面で
切りとした。

この場面、実はがチートイツの種として優秀だったのだ。自身が
を2枚抱えているだけではなく、対面の森山も1段目に
や
を切っている。逆に、全体的に中張牌が目立つ河となっており、
などの字牌が場に高い局面だった。
ふわっと切っただったが、あの瞬間「おれなんかやったかもな」という思いが脳裏をよぎったという。
その後、を重ねて迷わず
単騎でリーチした浅井。一発目に持ってきたのは、
だった。

「もし、ドラ(
)、
の3枚で待ちを選べていたら
待ちにしていた」と振り返った浅井。跳満や倍満の可能性もあっただけに、「
の放銃よりも圧倒的に後悔している」一打となってしまった。

一方、壮絶な戦いを終えた森山が語ったのは、麻雀プロとしての理想像だった。
麻雀が持つ「流れ」に余計な手を加えず、かといって逃げずに向かい合ったと試合を振り返った森山。ふと、「麻雀は難しいんだよ」と口にした。「単なる絵合わせではつまらないと思うんだよね。観ている人が納得できる麻雀をどう打つかが大切。若い人の活躍が目立つけど、経験があるからこそいいものを魅せられるんですよ。この年齢だけど、麻雀の深さを知らしめていきたいね」と目を細めた。

卓組が発表されたときから、その注目度が高かった森山と浅井。5年越しの因縁は、森山に軍配が上がった。不思議な縁によって結びつけられた二人の数奇な運命は、きっとこの先も麻雀界を大いに盛り上げてくれるだろう。
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虫かご
鹿児島県出身、東京都在住の25歳。本業である新聞記者の傍ら、ライター業に励む。noteも不定期で更新中。好きな麻雀プロは堀慎吾選手。行きつけの雀荘は浅草橋・新時代。
X:@mushikagokun