森山茂和と浅井裕介、5年越しの因縁に決着。それぞれが追い求めた麻雀像とは。 【麻雀最強戦2025 師弟と因縁フォーエバー】観戦記【決勝卓】文:虫かご

森山茂和と浅井裕介、
5年越しの因縁に決着。
それぞれが追い求めた
麻雀像とは。

【決勝卓】担当記者:虫かご 2025年10月11日(土)

麻雀最強戦2025グループリーグ9「師弟と因縁フォーエバー」。予選を勝ち上がったのは、連盟の「師弟」、そして5年前の「因縁」に引き寄せられたこの4人だった。

東家:森山茂和(日本プロ麻雀連盟)

日本プロ麻雀連盟会長。2020年の麻雀最強戦で浅井が形式テンパイを取ったことに対して、解説席で「麻雀をやめた方がいいね」と発言し、大きな反響を呼んだ。自らを「かませ犬」と表現し挑むが、その目は頂点を見据えているはずだ。

南家:瀬戸熊直樹(日本プロ麻雀連盟)

連盟の大先輩、伊藤を「恩師」と仰ぐ瀬戸熊。麻雀プロとしての土台を築いてくれた伊藤と、鳳凰位決定戦で戦うことが夢だという。その前哨戦を制し、ファイナル進出を狙う。

西家:浅井裕介(最高位戦日本プロ麻雀協会)

予選では森山とともに通過を決めた浅井。因縁のきっかけとなった一件から5年越しに実現した対決。トップ取りの決勝卓で決着をつけたい。

北家: 伊藤優孝(日本プロ麻雀連盟)

日本プロ麻雀連盟の副会長。通り名である「死神」を体現するかのごとく、予選ではオーラスの親番でラス目から復活を果たした。予選と同じ座席で、ファイナル進出を決めるか。

浅井と森山の因縁が場を支配

それぞれが皆、対面に座る者へ様々な思いを抱いて始まった対局。卓上を終始支配したのは、浅井、そして森山だった。

東場は浅井が順調に加点を重ねる。東3局1本場は瀬戸熊、そして森山がテンパイを入れる中で最終盤にイーペーコーを完成させて【1マン】【4マン】のリーチを敢行。一発で瀬戸熊から直撃し、7700は8000の和了となった。

対する森山も、南場から徐々に存在感が目立ち始める。南1局、親番を迎えた中で7巡目に【5ピン】【8ピン】先制リーチ。しっかりと一発でツモり、4000オールの和了を決めた。

かと思えば南2局

親番の瀬戸熊がドラの【5マン】を3枚手中に収めた中で、浅井も好配牌を手にする。トップ取りの決勝卓で、浅井の「意志」がにじみ出たのは、【8マン】を引いたこの場面だった。

【8ソウ】【4ピン】【7ピン】を切ればテンパイする場面だが、解説席の園田賢プロも「なんか違うんだよなぁ」と不満な様子。それに呼応するかのように、【1ソウ】切りを選択してテンパイを外した。

園田プロも「そうそうそうそう!」と共感する。3巡目のリーチのみよりも、リーチ・タンヤオピンフに照準を定め、大きな加点を狙いにいった。

次巡、【2ソウ】を引いてカン【7ソウ】で再びテンパイするも、迷い鳴く【8ソウ】切りを選択。

7巡目に当初の狙い通りのテンパイを入れ、【5ピン】【8ピン】待ちでリーチをかけた。

親番を落とせない瀬戸熊が【3ソウ】【6ソウ】で追いかけリーチをかけるも、それを振り払うかのようにハイテイ【5ピン】をツモり、2000-4000をアガった。浅井と森山、それぞれがチャンス手を確実にものにし、2人が大きく抜け出す形となる。

勝負を分けたそれぞれの【4ピン】

南3局。森山が、ついに伝家の宝刀を抜く。

先手を取ったのは、前局の和了の勢いそのままに他家を突き放しにかかる浅井。【2ソウ】【5ソウ】の先制リーチ。

対して、それよりも先に【3マン】【4ピン】ダマテンをいれていた森山。浅井のリーチ後、一発目に【8ピン】を持ってくる。ドラの【4ピン】を切れば【3ピン】【6ピン】【9ピン】待ちとなる格好だ。

観ているこちら側が「三面帳だけどドラが出て行くのか……」と思った刹那。迷いなどみじんも感じさせない森山の左腕がぬっと出てきた。そのまま河に添えられる左手。勢いよく【4ピン】を切り出す右腕。この日、誰もが待ち望んだ森山の「アトミックリーチ」が発動した。

――今年7月に東京で開催された世界麻雀。そのインタビューで、森山は自身の代名詞である「アトミックリーチ」をこう表現していた。

「あれは正々堂々としたリーチなんですよ。地獄待ちの単騎とか、筋引っかけのリーチでは打たない。ほぼ両面以上の待ちで、『手が高いよ』と教えているだけなんです」

その言葉にウソやごまかしはなかった。トップ目の親番からのリーチに対し、【4ピン】を切って三面帳の真っ向勝負。試合後にも「ああしないと勝ち目がないからね」と振り返った。

結果は森山の【3ピン】ツモ。2000-4000を和了、浅井の独走に待ったをかけた。

さらに【4ピン】が勝負を大きく分ける。オーラス南4局。森山と浅井がほぼ並びの状態でスピード勝負が見込まれる中、ここまでなかなか前に出られなかった伊藤が【1ピン】【4ピン】待ちの先制リーチ。

対して、イーペーコーを確定させ、伊藤のリーチ棒込みで1000点の和了でも優勝が決まる浅井だったが、一発で持ってきたのは【6マン】だった。

横にのびた形でのテンパイを思い描いていた中で、【4ピン】【5ピン】を切ればチートイツでテンパイがとれる形となった。ただ、【4ピン】はすでに2枚見えており、和了への道筋がかなり細い。一方の【4ピン】はドラ。伊藤の現物である【5マン】でオリる選択肢も当然ある。

……浅井の選択は、【4ピン】切りだった。

優勝が目の前に見えていた中で、痛恨の12000放銃。伊藤の現物【5マン】は、すでに【白】をポンしてテンパイの可能性もあった森山にあたる可能性を否定できなかったと振り返った。

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