仲林君の8s放銃は「いい放銃」だった【清水香織の「セメントチェック」Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 12/16 第2試合】

日本プロ麻雀連盟の「セメントクイーン」清水香織

今年の最強戦でも活躍し、今は女流桜花決定戦を戦う彼女が、Mリーグの激闘をチェック‼

第2試合

■渋川君の時間を生んだのは思い切りのよいドラ切りリーチ

今日は完全に渋川君の日でしたね。東1局から激アツの3軒リーチがあったじゃないですか。あそこで渋川君が一発ツモをして、岡田紗佳のトップもあったから、余計に同日連勝を目指している気持ちも強かったのかなと思います。ハネ満ツモなのでちょっと抜けて、この後にどうなるのかな、と思って見ていました。

「渋々タイム」とか言われていたけど、東3局の親番で渋川君がモードに入ったのって、うまく組んだチートイツのドラ【6ピン】単騎か【西】単騎のテンパイのところですよね。あれ、点数もリードしているからドラ単騎ダマもあるし、リーチ打つなら【西】というのもあるんだけど、ドラポンされたらアレだから1回ドラ切ってダマにするかな、という気持ちが生まれるときって結構あったりするんですよ。タイプ的には私も【6ピン】【西】切ってリーチと言っちゃったりするタイプではあるんですけど、あそこで迷いなく「【6ピン】じゃアガれないと思っていた、1枚切れの【西】単騎は絶好」ということで即リーチに行って4800をアガった、あれが渋川モードを引き寄せたと思います。

神目線で見ていたら、【6ピン】は園田さんに3枚持たれで純カラ、アガリはなかったんです。もしドラ単騎にしていたら、園田さんのタンヤオに押し切られちゃう可能性も十分にありました。あそこでドラを切ってリーチしてポンされたとしても「もともとドラツモれなかったんだからいいや」と思う気持ち、その振りきりがその後の大連荘につながったんじゃないかと思います。ちょっとオカルトみたいな話になっちゃいますけど、実際にアガリが発生していますからね。

■仲林君はチャンスが来たら生かせる押し引きをしていた

渋川君がずっと点数を重ねていってみんなが平等に削られていくなかで、誰が親を落とすのか。それで東3局の4本場に園田さんが仕掛けていって、最初はハイテイずらしなのかなと思わせつつ、【7マン】単騎テンパイ。仲林君も自分のテンパイ取りをしていって、結局【8ソウ】放銃にはなるんですけど、あのときはほぼ手詰まりでしたよね。【7マン】のトイツを落としても園田さんの【7マン】単騎に当たるし、【5ソウ】【8ソウ】もドラまたぎだから当たったら5800以上って言われるなというところだったけど、あの仲林君の【8ソウ】放銃は、全然いい放銃なんじゃないかと私は思います。

点数的には当然キツいですよ、2着争いが熾烈ななかで、5800の4本場は相当大きいので。でも、誰かがこの親を落とさなきゃ、というところで真っすぐ行くのがすごく仲林君らしいと思ったし、自分のアガリを求めていくならいい放銃だったと思います。戦いに行って放銃しただけなのでそんな傷はなんとも思わないというか、変にオリ打ちしちゃったほうが心にダメージが来ますし、こういうふうに戦って打ち込みをするんだったらまだまだ挽回のチャンスは来るんじゃないかな、と思って見ていました。

仲林君はその後も手が入っていて、すごくいいバランスで押し引きしていたんですけど、今日はなかなかそれが実らなくて「そういう日ってあるよね、麻雀だから」という感じでした。たまたまチャンスが来なかっただけで、チャンスが来たらそれをすごく生かせる押し引きをしていたと思います。

■瀬戸熊君の読みの精度はやっぱりすごい

あとは南入してからの2着争いの攻防ですかね。南1局の瀬戸熊君の親番で、巻き返しが見事だったなと思いました。【4マン】【5マン】【7ソウ】【8ソウ】のどちらを払うかの選択で、【9ソウ】が2切れ【6ソウ】1切れで【3マン】が2切れ、タンヤオにはならないので、枚数で言ったら見えていない【3マン】【6マン】受けを残す人とかもいると思いますけど、私は【7ソウ】【8ソウ】を残すんじゃないかと思ったんです。

それはもし自分がリーチした場合に、相手が勝負に来たときは、【6ソウ】は分からないけど【9ソウ】は出るんじゃないかというところと、それだけ切れているから逆に山には残っているんじゃないかという読みだと思います。【3マン】【6マン】に関しては全くの未知数だし、真ん中の牌は出づらいので端にかかった待ちにしたいというのもあったと思いますけど、その選択で【4マン】【5マン】を落としたことによって、リーチを受けて一回現物の【8ソウ】を切ったもののカン【6ソウ】待ちのリーチで2000オールをツモ。【3マン】【6マン】よりも先にカン【6ソウ】をツモっているので、その読みが当たっているということですよね。そういうところの読みの精度って、瀬戸熊君はやっぱすごいなと思いました。

そこでも確か仲林君がホンイツ仕掛けをしていて、先制リーチに対してどうしようかと悩みながらも、【6ソウ】を一回プッシュするんですよ。その【6ソウ】が瀬戸熊君のリーチに間に合っているから、なおのこと仲林君にワンチャンあるんじゃないかな、と思った局でもありました。今日は仲林君の日じゃなかったというだけで、のれば爆発するのはMトーナメントで仲林君にボロ負けした私が一番よくわかっていますから。

■園田さんの勝負勘、大局観がカッコいいと思った

そこで瀬戸熊君が勢いに乗って、少し離れた2着目に上がって行ったじゃないですか。そこからさらにドラのカン【4ピン】待ちのリーチに行って、だけどドラドラだった園田さんチートイツで追いついて【2ソウ】単騎待ちで迷わずリーチに行ってハネ満を引いて、そこでまたもつれたんです、2着争いが。そういうシーソーゲームって見ていて楽しいんですよ、自分がやっているときは最悪ですけど。自分がプレーヤーならキツくて仕方ないですけど、プレーヤーが苦しんでいれば苦しんでいるほど、それぞれのファンが盛り上がると思います。

その後、南3局に瀬戸熊君がドラドラ赤のリーチをかけて、そこに園田さんが向かっていったんです。あれがまた、麻雀の攻防のなかですごく大事な一局だと思いました。自分の親番も落ちていて3着で、もう一回瀬戸熊君にアガられちゃったら2着も厳しいじゃないですか。だけど、打ち込むとラスに近づく危険性もある状況のなかで、結果は放銃でしたけど、自分の手が整っているからそこで勝負に行った園田さんの打ち方、大局観や勝負勘といったものはすごくカッコいいと思いました。

■熱い戦いを見て、私も決定戦に向けて闘志が湧きました

もちろん、突き抜けていった渋川君には要所要所ですごいところがたくさんあったんですけど、その後の点数的に取り残された3者の2着争いにもすごく見応えあって、ロングゲームでしたけど本当に最後まで目が離せない戦いだったと思いました。自分もそういう局面にあったことが多々あるので、いろいろな人の気持ちが自分に流れ込んできて、胸アツな展開でしたね。

私、明日は女流桜花決定戦の2日目なんですけど、今日の熱い着順争いを見て、勝負掛けの2日目に向けて戦う気持ちをもらえました。女流桜花決定戦は1日目が終わって3人競りの状態なので、今日の試合がなおさら自分とマッチしちゃうところがあったかもしれないですね。「条件戦のときって苦しいよね、どうしようかな」というところでみなさんの戦いがすごかったので、この試合を見てすごく勉強になったと思っていますし、あの熱い戦いを見て、より闘志が湧きました。絶対に明日は頑張ろう、勝ちに行こうと思っています。

  • この記事が気に入ったら
    フォローをお願いいたします!
    最新の麻雀・Mリーグ情報をお届けします!

  • \近代麻雀シリーズ 新刊情報/