熱論!Mリーグ【Fri】
朝倉康心の苦悩…
相手の手牌が
読めすぎてしまう件
文・阿部柊太朗【金曜担当ライター】2018年12月7日
「性能のいいマシンが参戦する」
と聞き、フェラーリやベンツを想像していたらジェット機が来たという感じ。
鳴り物入りでデビューした藤井聡太四段(現七段)に対して、高野秀行六段が送った言葉だ。
そして今年、麻雀界でもある男の鮮烈なプロデビューに衝撃が走った。
朝倉康心、32歳。
インターネット麻雀”天鳳”において、人間には不可能とまで言われた最高の称号、天鳳位を2度も獲得。
ネット麻雀界において神格化された存在として、その名を轟かせた。
2018年、それらの功績が評価され最高位戦日本プロ麻雀協会に推薦入会。特例でB1リーグからの参戦を許可された。
しかし、一部では「ネット麻雀は強いけど…」などと実力を不安視する声も上がった。
朝倉はこれらの声を結果で吹き飛ばした。
名だたるプロたちを抑え、581ptを叩いてのぶっちぎりの優勝。まさにジェット機のごとき性能を見せつけ、麻雀界に衝撃を与えた。
そう、朝倉は強い。強すぎるのだ。
開局、親番で好配牌の朝倉、5巡目で早くもイーシャンテン。
くっつき候補の選択だが、朝倉は打を選択。
他家全員がピンズの上を切っており、周りの場況が良好。マンズは多面待ちに魅力を感じたといったところだろう。
朝倉の読み通り、この時点でが3枚・が3枚残っている。
相手の手牌読みに優れた朝倉は、こういった選択を間違えない
しかし山にあったからといって、自分の手に来るとは限らない。
目の前で前原とたろうにをツモ切られてしまう。
「山にあるのは知ってんの!」
という朝倉の心の声が聞こえた。
そして朝倉の手に来たのは無情にも。
手牌が読めていたがゆえのテンパイ逃しだ。
それでも朝倉は目の前の最善を尽くすのみと前を向く。
が3枚切れたので価値の低くなったを切り、を残す。
するとそのに反応したのがたろう。
赤含みでをチー。バックでアガリに向かう。
数巡後、狙い通りも鳴け、待ちの高目マンガンのテンパイを入れる。
12巡目、ようやくテンパイで追いついた朝倉。
ドラドラということもあり、かのどちらかを切ってリーチをかけるかと思われた。
しかし朝倉の選択は切って役なしのダマテン。
これは朝倉の読みが抜群に光った選択だ。
たろうの仕掛け出しはのリャンメンチー。そしてポンだ。
3度の飯より高打点が好きなたろうが、リャンメンチーから入りバックで仕掛けて安いことがあるだろうか?いや、そんなことはないだろう。
そしてたろうに当たりそうな牌はかの2分の1に絞られている。
はもちろん切れないし、を引いた時に受け止められるようにしておきたい。
相手の打ち筋、手牌が読めているからこそのダマテンだ。
しかし皆さんはご存知の通り、たろうの待ちは無情にも。
もし考えなしにを切ってリーチをかけていたら、たろうが先にを掴んで7,700や12,000のアガリを拾えていただろう。
読めすぎた。読みが鋭すぎたがゆえのアガリ逃し。
「アガらないなら、俺がアガるよ」
と、たろうの1,000・2,000ツモで決着。
強すぎた。朝倉は強すぎたがゆえに、2,000点を支払わされた。