インフルエンザ事件
ある真冬の日のことである。彼女が40度を超える熱を出した。ほとんどの確率でインフルエンザだろう。百恵ちゃんは他人の病気をもらうのは絶対に嫌なので会うのは控えていたのだが、彼女は何故か病院には行かず自力で治そうとしていた。その結果、二階にいた彼女は命の危機を感じたのか二階の窓ガラスを頭でカチ割り、頭から血をながした状態で地上にダイブすることになる。あんまり覚えていないと言っていたのでぶっ飛んだ潜在意識がそうさせたのであろう。そして真冬にパンツにTシャツ一枚、頭から血をながしながら雪道を裸足で徘徊し、近くのファミレス に入り店員に
「たすけてください」
と言ったそうだ。ホラーである。店員さんもさぞびっくりしたことだろう。
しかし偶然そのファミレスに彼女の母と姉が食事に来ていて無事回収されたらしい。後日その話を聞いて百恵ちゃんはしばらくは友達ではないふりをしようと決めたのだった。
それからはちゃんと病院に行く様にはなった。二人まとめて風邪をひいた時に一緒に病院に行き、彼女は漢字が読めないので読んであげつつ問診票を書いたことがあった。
『過去に大きな手術をしたことはありますか』
という問いに対して彼女は汚い巨大な文字で
“まきずめ”
と書いていた。
「巻き爪の『ず』は『つ』に点々だよ」
と言ってあげるのが優しさなのだろうが彼女にいちいち指摘していると発狂してしまうので指摘はしなかったが、なぜ巻き爪の手術のことを書いたのかは気になったので
「いや、巻き爪の手術いま関係なくない?」
と聞くと
「すごい大変な手術だったから。。。」
と言われた。
あまりにレベルの低い問診票に混乱した百恵ちゃんはその後更に高熱を出した。
田渕家ギャラリー展
当時の写真を紹介していきたい。
左から幼馴染み、百恵ちゃん、百恵母、幼馴染み姉、知らん外国人だ。見知らぬ外国人と写真を撮ることに乗り気でない我々二人が全く笑っていない大変趣深い写真である。そして母のファッションはおそらく20年前のファッション業界でも究極にダサかっただろう。母も父もファッションに全くセンスがなく不思議なアイテムを買ってくるので家には謎のアイテムで溢れていた。
これは実家の美容室の前で撮られた写真である。父も父でどのような気持ちでこのファッションをしていたかは定かではないが真冬の北海道でもサンダルを履き続けている現在よりかは守備力は高そうである。そしてこの
『ビューティーサロン田渕』
は百恵ちゃんが小学生の時に突如、
『美容室オレンジ』
に改名された。なぜ改名したのか、なぜオレンジなのか、と聞いたことがあったが特に意味はないらしい。全くもって理解不能である。
次回は11月28日(木)午前0時更新予定‼︎
「SNS事件編」
「滝川市」
「定時制高校入学」
の3本立てです。お楽しみに!
【田渕家登場人物紹介】
・父 コージ:元陸上自衛隊幹部高卒ながら佐官まで登り詰めるも「髪型が奇抜すぎる」という理由で100年に1度あるかどうかの異動の内示取り消しをされた経験がある。現在は三度目の暖かな家庭を築いている。
・母 イクコ:美容師。美容室を自宅で開業するもパチンコにハマり開店休業状態を約20年続けた猛者。おそろしいほど料理が下手。ツーブロックにしたことがある。近況を知らせる連絡では年下のペンキ屋さんとお見合いをしたらしい。
・姉 タエ:無職。1度も定職に就いたことがなく家賃を滞納してはクビが回らなくなりお父さんに払ってもらいに帰ってく るお調子者。過去に大きな交通事故に遭いウン百万円もの保険金を手にするが全てホストクラブに費やした経験がある。
・エリー:田渕家の飼い犬。詐病のプロ。足をひきずったり弱ったふりをしては人間に甘やかしてもらう。動物病院で『至って健康』という診断をされるとそれまでの弱りっぷりを忘れ、凛々しい顔で帰ってくる。趣味は父の顔に噛みつくこと。オスだが思いつきでエリーと名付けられた。
北海道出身。最高位戦日本プロ麻雀協会40期。座右の銘は「ビールは一日3リットルまで」。『近代麻雀』でも同コラムを連載中!