カブで人生を狂わされた女……
女流プロ雀士
【百恵ちゃんのクズコラム】
VOL.5
前回までの「百恵ちゃんノート」
コラムのことをどこからか聞きつけた母から姉にメールがいったようでそのメールのスクリーンショットが送られてきた。
もっちとは百恵ちゃんの愛称である。
暴力団とは???
と思いよくよく聞いてみると
どう考えても情報源が「ポプテピピック」だった。あまりの知能レベルに目眩がした。それにもし本気で心配しているのなら「ヤバイ!」で片付けないでほしいものである。百恵ちゃんはこんな人を数十年相手しているのだ。勲章のひとつでも欲しいものである。
カブに人生を狂わされた女
さて、百恵ちゃんの人生に語るに於いて絶対に避けられない人物がいる。幼馴染みのマイちゃんだ。現在は3人の子供を産み働きながら育てているが一度も結婚したことはなく、更に子供たちは全員父親が違うという斬新なファミリーを築いている。そして最近ロシア人の子供を産んだばかりだ。近況だけでも情報量が多すぎて書いているこっちも疲れてくる。
彼女はかなりの美人であり、雑誌なんかにも載ったこともあるくらいなのだが偏差値は2くらいしかないのでないかと思われる程頭脳に難がある。 算数の授業で野菜のカブの数え方を教わった時から先生の言っていることが理解できず勉強が嫌いになったらしい。何度も
「カブのせいで…」
と、カブの悪口を言っていた。おそらく日本で一番カブを忌み嫌っている人間だろう。
はじめて会う人はあまりの変人っぷりにびっくりしてしまうので彼女のことを紹介するときはあらかじめ『日本の闇』と説明している。百恵ちゃんの変人レベルが3だとすると彼女は2000くらいだろう。いかれた家族とこの幼馴染みとずっと一緒にいたので百恵ちゃんは自分が変わっているという自覚が持てず、自分が少し変人だということに気付いたのは上京してからだった。彼女と出会った時の記憶はない。母親同士が同じ美容師で仲が良く、物心がつく前から一緒にいたからだ。
そんな彼女の家はひと蹴りすれば崩れてしまいそうなボロボロの家だった。建て付けがいかれてしまっているのか玄関の扉が完全に締まることはなく、いつも半開きで鍵すらも掛けられない状態だった。もちろん冬でもそんな状態なので信じられない程寒かった。何故か寝室にはストーブがなかったため泊まりに行ったときは白い息を吐きながら彼女とくっついて寝ていた。よく誰も凍死しなかったと思う。
そんな家に彼女はお母さん、三歳上のお姉ちゃんとおじいちゃんと暮らしていた。このおじいちゃんが粗大ゴミを持って帰ってきてしまうパワータイプの老人で家の前には謎のバカでかいトラックと廃車になった乗用車、そして大量の粗大ゴミでバリアが張られていた。更に全盛期は犬5匹と猫26匹、ニワトリ2匹、うさぎ一匹を飼っていた。現在は取り壊してしまったがいつテレビの取材が来てもおかしくないレベルのイカれた家だった。
更に近隣の近所同士も仲が悪かった。近くに“自分ちの先代が市に寄付をしたお金で作られた公園”と言い張る大きな家に住んでいる傲慢な人がいた。その公園にテラチババァと呼ばれる近所からハチャメチャに嫌われているおばさんが勝手に花を植えはじめた。しかしその傲慢な住人の気に触ったらしく花を全部刈られてしまうという事件があった。花が全部刈られたギッタギタの公園。目の前に佇むゴミ屋敷。カオスである。百恵ちゃんなら絶対に住みたくない。
彼女の小学校生活も酷いものだった。彼女のお母さんは毎日パチンコ屋さんの閉店時間である23時すぎに帰ってくるのだが家のお風呂がぶっ壊れている為、ダッシュで閉店間際の銭湯に駆け込む。百恵ちゃんが泊まりに行っている時もいつも玄関から
「全員大至急ッッッ!!!!!」
と、招集をかけられていた。毎日毎日そんなに焦るなら早く切り上げて帰ってくればいいのにと思っていたが百恵ちゃんはこの「全員大至急」という頭の悪そうな言葉がたまらなく好きで今でも彼女に会うと真似をしてしまう。
そんな生活をしていると必然的に寝坊をしてしまう。寝坊という表現は間違っているのかもしれない。そもそも彼女には何時に起きようなどという概念がないからだ。早くても10時過ぎに学校へ行くというゆったりとしたライフスタイルだった。百恵ちゃんたちの世代はスーパーゆとり世代だが彼女は小学校のころからそのゆとり教育すらまともに受けていなかったのだ。もしもゆとり日本代表チームが結成されることがあれば是非エース枠に推薦したいと思う。日本教育界の闇としていい仕事をすることだろう。彼女は百恵ちゃんの人生に多大なる影響を与えた。そしてとんでもない奇行の数々によって『ちょっとやそっとじゃ動じない精神力』までも与えてくれた。