ゼウスの自己否定 己の「慢心」を戒めた鈴木たろうの「会心撃」【熱論!Mリーグ/FS第9節】

熱論!Mリーグ【FS第9節】

ゼウスの自己否定

己の「慢心」を戒めた

鈴木たろうの「会心撃」

文・阿部柊太朗【FS第9節担当ライター】2019年3月9日

 

鈴木たろうは嘆いていた。

「あんなほとんど当たんないんだよなぁ…」

あんなとは

こののことだ。

7/24回戦、

オーラスの親番を迎えてトップ目のたろう。役牌を鳴いて2,900または3,900のテンパイを入れていたが、白鳥のリーチの一発目に対して2枚切れのでオリた。点棒状況は以下の通り。

白鳥にはハネマン直撃条件、滝沢にはリーチ棒が出たことでマンガン出アガリ条件。そうなると、この局の押し引きを左右する焦点は3つ。

①自身がアガれた場合の次局の条件

②滝沢の動向

の放銃率

だ。

まず①についてだが、安目のでアガった場合だと南4局1本場の点差は以下。

1本場のマンガンツモは12,400点縮まるので、同点2着。仮にアガれたとしても決して楽な点差になるわけではない。

続いて②について。滝沢がどの程度押し返してくるかという点。滝沢はマンガンをアガればトップだが、白鳥に放銃すると3着落ちの可能性もある。

つまり白鳥のリーチ後に、滝沢がどのように動くかがたろうの押し引きに大きく影響する。リーチの一発目、滝沢は手出しで現物の

たろう「タッキーが一発目に手出し。オリたかなーって思ったんだよね。タッキーっていうブランドも強く影響してて、そんなに無理しないかもなって」

 

最後に③の放銃率について。2枚切れの字牌などほとんど当たらないように思うが、たろうはたろうであったがゆえにこのを押せなかった。

 

たろう「もし俺が翔ちゃん(白鳥)の立場だったら、なんとしても着順を上げようって考えるんだよね。着順落ちのリスクが無いから」

 

3着目の白鳥と4着目の前原の点差は32,700点。確かに無茶をしてでも着順UPを狙ってきそうな局面だ。

 

たろう「だから俺ならこういう地獄単騎みたいないやらしい待ちで直撃狙いそうだなって思っちゃった。これでハネマン打ったら馬鹿らしいなって。普段より地獄のの放銃率を高く見積もりすぎた」

 

しかしそれで言うならば…

 

たろう「そう。それで言うなら俺がタッキーの立場だった時にどうするかも考えないといけないよね。俺がタッキーの立場なら絶対にオリない」

オリたことによりでの3900のアガリを逃し…

 

滝沢がオリているわけがなかった。ツモ三色ドラ赤の鮮やかな手でトップを奪取。

たろうはハッキリとした言葉でこう語った。

 

たろう「慢心だね」

しかしタダでは転ばぬのがたろう。再び登場した9/24回戦で

見事な打ちまわしを披露し、圧巻のたろうショーを見せつけた。

東2局、6巡目でヘッドレスのイーシャンテンのたろうはここから打

たろうという男が親番で「勝又の現物だから…」などと言うわけがない。そもそも通常なら図々しくに備えてを残しているところだ。ではなぜなのかというと…

の場況が良いからだ。また先にツモから入った場合は

と一気通貫も見えるさらにグレードの高い手牌への変化も見ることができる。

13巡目、形が変化し万全のイーシャンテン。しかしこの時、神視点で見ている私たちは知っていた。

対面の多井が待ちでテンパイしていることを。ツモは言うまでもなくお、ツモのテンパイでもアガりは絶望的だった。が出て行かないツモ

などのテンパイに期待するしかないか…と思っていたところに引き入れたのは

望外のツモ。を切れば安全にテンパイが取れるが、たろうは強くドラの切りリーチとした。

 

たろう「アガりたいからね。取るべきリスクは取るよ」

 

これをツモって4,000オール。

対局後

「望外のツモ、ラッキーでしたね」

と私が言うと、たろうはこう語った。

 

たろう「多井さんでしょ?は切らないよ。引いたらシャンポンにしようと思ってた」

 

つまりツモの未来はこうなっていたという。

「へへへ」

と軽く笑うたろう。つくづく頼もしい男である。

 

阿部柊太朗

最高位戦日本プロ麻雀協会所属。オンライン麻雀「天鳳」の牌譜機能を駆使した超緻密な観戦記が話題に。ブレイク間近の若手プロ雀士。

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