男性最年少Mリーガー
松本吉弘、自身通算
100戦目で見せつけた
センスと技術
文・武中進【金曜臨時ライター】2022年2月25日
【第2試合】
東家:二階堂亜樹(EX風林火山)
南家:石橋伸洋(U-NEXT Pirates)
西家:滝沢和典(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
北家:松本吉弘(渋谷ABEMAS)
2/25(金)の2戦目、
いよいよ今期のセミファイルに向けた大詰めとなる終盤戦、
結果から言えばこの半荘は松本吉弘が8万点オーバーの特大トップ、アベマズはこれにより単独3位に浮上となった。
細かい内容についてはあとで触れるが、
その前に彼の日本プロ麻雀協会での入会当時から現在までを多少知っている筆者の目から見た、その印象等を書こうと思う。
松本に初めて会った時、彼は20歳とちょっとの若者だった。
無論当時からあの高身長と風貌だったため、風林火山の松ヶ瀬ほどではないにしても威圧感も少々あったのだが、それ以上にとにかく礼儀正しい若者だった記憶がある。
一方で麻雀に関して何回か話をしていて「センスあるなあ」と思うことがやはり多かった。
ちょっとここで麻雀の「センス」について私見を書いておきたい。(本気で書くと多分数十ページになるので重要な部分のみ)
麻雀において一番重要なセンスとは「いかにスジの良い仮説を立てる事ができるか」という点につきる。
仮説を立てる力というのをイメージしやすく例えると、
以下の図のような池、そしてそこで魚を釣るためのアプローチと言えるかもしれない。
つまり
・いかに魚が近くにいる効率的なスポットで釣竿を放れるか
・そのスポットが悪そうな場合に適切に場所を変えらるか
という点である。
世の中の大半の事象、麻雀の研究についても「A」「B」「C」・・・・という無限に近い様々な領域がある。
その中で出来る限り本質に目を向けて、多くの収穫を得られるようなポイントを想定してリソース(使える時間と労力)を集中する事、
人間のリソースには限りがある以上、そのポイントを見極める力はある意味で選手にとって努力よりも大事な素質と言える。
ピンとこない人がいるかもしれないのでちょっとAIの事例も出しておきたい。
近年将棋や囲碁で人間を超える超高性能AIが出てきているが、そのパイオニアともいえる存在の一つがチェスで90年代に世界チャンピオンを撃破したIBM社の「ディープブル-」だろう。
だがディープブルーのAIが予測された手筋のほぼすべてを洗い出すブルドーザー式の考えをベースにした一方で、
それよりも遥かに選択肢が多い将棋・囲碁ではこの思考ルーチンはそのまま適用できず、前述の仮説思考をベースとした別アプローチが含まれている。
つまり人間を遥かに超える演算能力を持つ機械でも「すべての領域を検証する」という事は不可能なわけで、
この一点をもっても人間にとって「スジの良い仮説を立てる力」がいかに重要かを物語っている。
さて、松本について話を戻そう。
上述の通り協会にて初めて会った当初から彼の麻雀の本質に迫るセンスには驚かされた。
麻雀において重要な要素を見極める力、その当たり所に対する考え方、
「自分が20歳の時ってまだ麻雀の右も左も解ってなかったけどなあ。こんな若い子が今後いっぱい増えてきたら自分なんか業界の片隅にもいられない、、、」と恐怖に近い感覚を覚えたりもした。
そして当時の彼のスタイルは今よりも先手リーチや良形での捌きを重視する速攻寄りの打ち手でだった。
だが現在のスタイルは当時の感覚を持ちつつもそれをセンスと研究でさらに磨き上げ、より全体的な情報を包括し進化した物だと感じる。
この2回戦はまさにその現在のスタイルを見せつけた物だったと言えるだろう。
まず取り上げたいのは彼自身も会心の一局として挙げた東2局0本場
赤1枚を持ってのテンパイ、打でのカンリーチも十分にアリの選択だし、彼自身もそれを考えたとのこと。
ただこの時の河と切り出しから他家の手が早いと読んで打でのカンダマテンを選択。
滝沢については以下の大物手イーシャンテン、松本の細かく的確な判断が光る。
この後亜樹からリーチが来た直後に絶好のを引いて、十分な勝負手として追っかけリーチ。
そして一発でドラを力強く引き入れての3000,6000のアガリとなった。
トップ目で迎えた親番の東4局、
東2局と同様にカンチャンでのテンパイとなった中、今度は即リーチ。
自身が親である事、他家の河、様々な情報をトータルしての判断。