頂の鐘を鳴らすまえ──
祈りの代わりに
瑞原明奈が発した言葉
【須田良規のMリーグ2021セレクト・2月3日】文・須田良規
3月11日(金)の第2試合。
レギュラーシーズンの最終ゲームであり、周知のとおりMVPを賭けての、
U-NEXT Pirates・瑞原明奈とKADOKAWAサクラナイツ・沢崎誠の直接対決となった。
余談ではあるが、MVPというタイトルの意味についてはピンとこない方もいるかもしれない。
バウンティについて特に公表はされていないが、チームの優勝賞金が5000万円のリーグ戦である。
次期以降の契約への影響も含め、選手価値に大きく関わると思っていいだろう。
なお、過去MVPを獲得した選手は、
渋谷ABEMAS・多井隆晴、セガサミーフェニックス・魚谷侑未、KONAMI麻雀格闘倶楽部・佐々木寿人である。
今後も末永く、Mリーグを牽引していく存在になったことは間違いない。
さて、この対決の剣ヶ峰、オーラスの瑞原について興味深い局面があったので振り返ってみたい。
点棒状況は東家から、
KONAMI麻雀格闘倶楽部・佐々木寿人 41500
TEAM雷電・萩原聖人 1200
KADOKAWAサクラナイツ・沢崎誠 24600
U-NEXT Pirates・瑞原明奈 32700
となっている。
寿人は流局ノーテン終了でもトップ。
2着目瑞原とは8800差。
沢崎は瑞原と8100差で、着順が上の方がMVPとなる。
しかしこのオーラスは、東家・寿人がポン、ポン、と仕掛けて早々に親満テンパイ。
もちろん寿人に打つわけにはいかないため、
三者は慎重に進めていく。
沢崎はこの形になってを押す。
瑞原もこれを見て、寿人のアガリをひとまず祈ったかもしれない。
トップはもちろん寿人でいい。
チームポイントも現状首位であるから、ここでの期待は沢崎より上の順位だけなのだ。
寿人がを切って待ち変えしたところで、
沢崎がそれに合わせて打。
ここである。
これを瑞原が──
チー、と言った。
このとき、違和感のあった視聴者も多いかもしれない。
しかし、レギュラーシーズン最後の、この瑞原のプレイが──、
彼女が思考と人事を怠らず今日まで戦い抜いてきたことを、体現していたように思う。
もし三者がノーテン気味で、寿人が悠々の一人テンパイと見て流局した場合、
寿人は2着目瑞原との差を12800差にできるため、手を開ける可能性はゼロではない。
ここまでのチームポイントがこうなっていて──、
格闘倶楽部がセミファイナル最終日を戦える4位以上の条件は、プラスであればいい。
寿人が、伏せて確実にトップ終了を選ぶのか?
瑞原のマンツモでも捲られず、どこにハネマンを打ってもチーム4位確保なら、もっと大きく叩く親続行を選ぶのか?