◇はじめに
これは麻雀最強位を目指す妻とそれを応援する夫、2人の麻雀プロによる愛に満ちた麻雀戦術記録である。
先日行われた最強戦2021女流プロ最強新世代予選会で見事勝ち上がった妻・駒田真子(こまだまこ)。日本プロ麻雀連盟の先輩であり、以前に最強戦全日本プロ大会へと進出した経験もある夫・東谷達矢。
来る8月22日の決戦に向け、夏の麻雀強化講座が始まった!
まこ「すごい、日本またメダルだ」
東谷「コロナ禍で大変な時期だけど、がんばっている姿を見てると元気をもらえるねえ」
まこ「ね。プレッシャーも掛かっているはずなのに凄いなあ」
東谷「まこちゃんも最強戦で決勝に進んだ時には一打一打の重みに苦しむと思うけど、プレッシャーには強い方?」
まこ「あまり強くない方だと思う。失敗すると頭が真っ白になっちゃうからなあ」
東谷「緊張は自分で克服するしかないね。でも条件は他の人も同じだから、場をコントロールすることで相手にプレッシャーを掛けられるといいね」
まこ「場をコントロール?」
東谷「では今回の授業は、場のコントロールするプレッシャーについて考えてみよう」
東谷「さて、前置きだけど水泳やマラソンでプレッシャーを感じるのは前にいる時、それとも後ろにいる時?」
まこ「距離によるかなあ。前にいる時はピタリと後ろにつけられている時に感じるし、後ろにいる時は距離があればあるほど感じる」
東谷「そうだね。麻雀も同じ。最強戦の決勝戦のような一回勝負であれば、オーラスに近くなればなるほど、点差によってプレッシャーの掛かり方が変わってくる。ではこの点差で考えてみよう」
決勝戦南3局 ※トップのみ勝ち上がり
【Aさん】東家:10000点(4着目)
【Bさん】南家:39000点(トップ目)
【Cさん】西家:31000点(2着目)
【Dさん】北家:20000点(3着目)
東谷「この中で一番判断ミスしやすい人は誰だと思う?」
まこ「追う側は前に出るしかないから、1番点数を持ってるBさん?」
東谷「惜しい。それぞれの立場を整理するとこうなる」
【Aさん】親番中・4着目
・連荘必須
【Bさん】南家・トップ目
・南3局をアガって終えると、オーラス自身の親はノーテンでも優勝
・リスクを負って放銃したとしても致命傷にはならない
・高打点放銃は避けたい
・Cさんの打点が低いことがわかればアシストも可
【Cさん】西家・2着目
・できればBさんと4000点差以内に詰めておきたい(Bさんが次局ノーテンで伏せられなくなるため)
・Bさんの高打点のアガリは阻止しなければならない
・高打点放銃はできない
【Dさん】北家・3着目
・少しでもBさんとの点差を詰めたい
・Bさん・Cさんのこれ以上の加点は阻止しなければならない
・親番のAさんへの若干のアシストは可
まこ「わかった、Cさんだ! Bさんはまだ選択肢の幅があるけど、Cさんには制約が多い」
東谷「そう。Cさんは考えなければいけないことが多くて間違えやすい状況なんだ。じゃあまこちゃんが仮にDさんだったとして、この配牌をもらったとしよう」
【Dさん】北家・20000点持ち3着目の手牌
ドラ
まこ「中途半端だなあ。あまりアガれる気がしない」
東谷「まこちゃんは何切る?」
まこ「。手なりで進めてもスピード負けしそうだし、守備を意識しながら字牌が集まって高打点になりそうだったら勝負かな」
東谷「個人的にはドラがということもあり、タンピン系を初手で捨てたくはないから一切りたい。けど考え方はそれでいいと思う。大事なのは自分のアガリが遠い場合でも、その局にどれだけのことができるのか」
まこ「とにかくBさんやCさんの役牌は簡単に切りたくないなあ」
東谷「そう。親の連荘は望むところなので、引きつけてを切るのはいい。ただ、・・・は誰かが切った時にあわせ打つか、自分が戦える手になるまでは保留した方がいいね」
まこ「親が持ってるってわかったら切りやすいのにね」
東谷「序盤は読みようがないからしょうがない。ただ、親が露骨にホンイツを狙っていたり端牌を鳴いていた場合は早い巡目に切ってもいいかな」
まこ「なんで?」
東谷「仮にBさんやCさんに先に鳴かれたとしても、その後Aさんに鳴かせることができれば、少なくともCさんの足は止まる。親に高打点の放銃はできないからね。自分がプレッシャーを掛けられないのなら別の人にプレッシャーを掛けてもらうような方法を考えるんだ」