決め手はダイエット?
45kg痩せた男・吉田昇平の
大胆な手順
【B卓】担当記者:TYAS 2022年11月13日(日)
予選B卓の選手は以下の4名。
内藤岳 北海道出身、三重県在住ながら、タイトル予選のために西へ東へ全国を駆け回る選手。そのピンと伸びた背筋は、大学時代に所属した「居合道部」という世界でも珍しい競技からきている。
宮下慧一郎 立命館大学将棋部出身。先日の最強戦で圧勝した鈴木大介をはじめとして、「将棋」から入る麻雀の選手は多い。将棋の穴熊打法にちなんだ「麻雀穴熊打法」は、放銃しないだけでなく、煮詰まった場に対して甘い牌を1枚もおろさないことを指す。
新野竜太 4人の中で競技歴も年齢も頭ひとつ抜き出ている選手。アマチュア時代から最強戦に多数参加し、競技対局には一日の長がある。
吉田昇平 昨年から45kg痩せた男。そのインパクトが強すぎて、他の情報が頭に入ってこない。1年で細身の女性1人分の体重を落とした吉田は、「やると決めたらとことんやる」ストイックな性格の持ち主である。
いずれも最高位戦日本プロ麻雀協会の選手であり、プロ歴も1年〜8年とこれからを期待されている選手ばかりである。
東1局、吉田の4巡目リーチ3000・6000で幕を開けた。
上位2名までが勝ち抜けのため、誰もが早めに抜け出したい東1局で、まずはスタートダッシュに成功する。
東2局、親番の宮下がこのイーシャンテンから外しではなく、を選択した。
新野と吉田の第一打がであり、ペンの感触がそこまで悪くない。萬子の横伸びにも対応でき、裏目のを引いてもフリテン3面張に戻れる実戦的な一打である。
目論見通り親リーチまで漕ぎ着けるも、
山に4枚生きであったは全て他家と王牌に抑えられ流局。
東2局1本場、チーから入る内藤。
しかし思うように牌が伸びず、新野からリーチが入った。
まだ東2局とはいえ東1局でハネマンを親被りしており、どこかで一撃を決めないと内藤の浮上は難しい。しかし新野のアタリ牌であるが浮いており、くっつかない限り危ない。
内藤は最高位戦日本プロ麻雀協会の東海支部に所属している。しかし、内藤が最強戦出場のツイートをしたとき、東海地区だけでなく全国の競技選手が内藤にエールを送った。
タイトル予選のために全国を飛び回る姿勢、そしてその温かな人柄が、内藤を応援する気持ちにさせるのだ。
いくらビハインドを背負った状態でのチャンス手とはいえ、この手から押し返すのは厳しい。全国からの声援を背に受けた内藤は、道中にさえ切ればテンパイであった局面も必死に堪えた。結果は新野のツモ、700・1300。
東3局1本場
新野が親のリーチのみ2000点をアガった1本場。ここまで大人しかった宮下が澄んだ声でリーチを宣言。
「発声が素晴らしい。気持ちが良いね」
これまで受けてきたリーチの数が違う、解説の瀬戸熊が唸った。所作、声の大きさと間、23歳の若さにしてお手本のような宮下のリーチ宣言である。
2巡後にツモ、700・1300のアガリ。
ホンイツの大物手をテンパイしていた新野がそっと唇を噛んだ。
東4局、親番吉田の第一打が面白い。
この手、まずは字牌に手をかける打ち手が多いと思う。しかし吉田は、123の三色、ソーズの一通を見据えて、初打としたのだ。
吉田は昨年の11月から今年の7月にかけて、実に45kgのダイエットに成功している。
やったことがある人には分かると思うが、並大抵の努力ではない。そして恐らくダイエットの成功の裏側には、痩せるために必要な本質を見抜く力と思い切りの良さがあると思う。
親番とはいえ、にくっついただけの凡手をトップ目からぶつけたくはない。勝つために本質を見抜く力、初打にを選べる思い切りの良さは吉田だけのものである。
結果は安め1300オールのツモであったが、きちんと高め一通のテンパイに仕上げていた。
流局を挟んで南1局2本場。最後の親番内藤は、14600点のラス目である。当然内藤以外の3人は、全力でこの親番を落としたい。