無双の織姫・岡田紗佳
最強の座は自らの力でつかみ取る
【決勝卓】担当記者:東川亮 2024年7月7日(日)
麻雀最強戦2024「無双伝説」。
「無双」の名の下に集められた8名がしのぎを削り、男性4名のA卓からMリーガー2名を退けた岡崎涼太と浅井裕介、B卓からは唯一のMリーガーとなる岡田紗佳、3年前のファイナリスト・宮内こずえが通過。
そして迎えた決勝卓で、まさに「無双」の活躍を見せたのが、七夕の夜にふさわしい出で立ちで参上した、岡田紗佳である。
東2局。
岡田の手はリャンメンターツが豊富にあり、一見するとが最も不要に見える。
だが、岡田はのトイツ落としを選択。からのさらなる伸びを見つつ、を切ることでタンヤオも狙っていこうという一打。たしかにとの受け入れは減るが、そこが入ったところで打点が大きく上がる可能性は低い。まだ局も6巡目ということで、好形・高打点を目指した。
8巡目、構想がまさにバチッとハマった引きで、マンズが3メンチャン形に。ここでの切りはある程度形を決めつつ345三色も狙い、さらに守備駒も手に留めるという、攻守のバランスが非常に取れた一打。
岡崎の先制テンパイ、そして宮内のリーチが入るも、追いついたならば追っかけリーチ。
一発でツモって裏ドラを乗せ、リーチ一発ツモタンヤオピンフ裏の3000-6000。トップ取りの決勝卓で、まずは岡田が大きく抜け出す。
南1局1本場では、2番手の親番・宮内からリーチピンフイーペーコー裏の8000は8300を直撃し、さらにリードを広げる。
全員と3万点以上の差をつけ、もはや勝利は濃厚に見える。しかし岡田は、「ポイントはできる限り重ねておかないといけない」「1回大物手をアガるだけでは足りない」と思っていたという。
宮内・浅井の親番が終わり、ほぼ岡崎と1対1になった南3局の親番。岡田の手は5巡目にしてタンヤオピンフ、高目イーペーコーのテンパイとなった。ダマテンも利くか、安目では出アガリ2900と大きなアガリにはならない。さらなる打点を求めるならリーチだが、追ってくる相手に対して無防備になるリスクもある。
そんなことは、当然岡田も分かっている。その上で、決断はリーチだった。点数状況的に、このまま岡田の親が流れてオーラスに突入した場合、宮内・浅井には役満クラス、あるいはそれ以上のアガリが必要となり、事実上親の岡崎と一騎打ちの構図になる。そうなったときに、点数はあればあるほどいい。岡田が点数を持つほど、岡崎の条件も厳しくなるからだ。
引きの確定タンヤオピンフ三色ならダマテンにしたかもしれないが、待ちは十分、すでに2翻あってリーチの打点上昇効率もいいゾーン。ならば「やるしかねーな」とばかりに、リーチで大量加点を狙った。
3巡後にツモって、裏ドラ1枚で4000オール。この試合の岡田はとにかく効率的に裏ドラを乗せてくる。対戦相手としてはたまったものではない。
次局には宮内が可能性をつなごうと、ホンイツチートイツのリーチをかける。は2枚切れの地獄待ちで、それだけに出アガリの可能性、特に岡田を狙ってのリーチだっただろう。
そのは、リーチ時点で既に岡田の手の内だった。もちろん、手詰まれば切られる可能性もある。
しかし、岡田の手からロン牌が打たれることは最後までなかった。これで1局消化、あとは岡崎の親を流すだけだ。
だが、若くして最強戦の舞台で何度も印象的な活躍をしてきた岡崎が、岡田の前に立ちはだかる。
南4局2本場、テンパイだけで言えば、一番乗りは岡田だった。しかし、カンの役なしテンパイは取らず、ソーズで組み替えて好形テンパイを目指していく。ただ、役なしテンパイが濃厚なので、リャンメン待ちならばおそらくリーチも辞さずの構えだっただろう。
だが、直後に岡崎からリーチがかかった。こちらは配牌からが暗刻、形も整っており、満貫クラスのリーチにたどり着くのは時間の問題だった。
ツモって4000は4200オール。岡田との点差を半分近くまで詰める。
次局も岡田がテンパイ。カン待ちにを引いたところで、今度はを切ってのカン待ち、いわゆる「モロひっかけ」リーチをかけた。南3局同様、相手の攻撃に対して無防備にはなるが、たとえ岡崎に満貫を振り込んだところで、点数的にはほぼならびの状況。ただ、手をこまねいているうちに岡崎にさらなる加点を許せば、こうした勝負にいくことも難しくなってしまうし、結果として勝機を逸してしまうかもしれない。
点差があるうちにリスクを取るという戦略は、岡田がこの状況を見越して南3局に大きく加点していたからこそ実行できるもの。その意味でも、あのリーチとアガリの意味は大きかった。
ここは岡崎が追いついて岡田から2900は3800を出アガリ。リーチ棒を含め、1万点近く差を詰める。だが、まだ岡田が上だ。
その後も岡崎がテンパイや小さなアガリで粘り、南4局6本場では、岡田と岡崎の点差は2400点まで詰まっていた。いい加減決着をつけたい岡田に、カン待ちのテンパイが入る。目に見えて残り1枚だが、が4枚見えということから、残り1枚が山にある可能性が極めて高く、テンパイ必須の岡崎はつかめばほぼ切らざるを得ない。
岡田の、何度目かの王手。今度こそ、の思いが表情ににじむ。
この局は岡崎も苦しかった。残り巡目がわずかになってもテンパイが入らない。ポンは、1シャンテンを広げる鳴き。鳴かなければテンパイする牌はの3種だが、鳴いてを切ればと受け入れが倍以上に増える。理屈で言えば鳴きの一手。
しかし、岡崎は最後までテンパイできず。流局して手牌は伏せられ、決着はついた。
岡崎の対面、浅井の河に並ぶは、鳴きがなければ岡崎の下にやってきていた牌。時に理屈を裏切るのも、麻雀というゲームである。