美しき勝負服
~豊後葵の最強戦魂
【B卓】担当記者:千嶋辰治 2024年7月7日(日)
プロアマ問わず、麻雀打ちにとって麻雀最強戦は晴れの舞台。
晴れの舞台には着飾っていたいもの。
おっさんの私ですらカッチリとしたスーツで臨んだのだから、特に女性ならばなおさらであろう。
宮内こずえはオフショルダーの艶やかないでたち。
岡田紗佳は中国で求めたという幻想的な衣装。7月7日の七夕にちなみ、織姫をイメージしたものだろうか。
一瀬由梨も本人いわく織姫をイメージしたというスタイリングで登場した。
3人とも、晴れの舞台にふさわしく見目麗しい姿。
そして、豊後葵。
豊後は自身が活躍する「麻雀遊戯王」のロゴが大きくあしらわれた黄色いTシャツでコロシアムに現れた。
見慣れた姿でイーピンくんを放り投げた豊後。
豊後らしい、単なるコミカルなシーンに見えたかもしれない。
が、この晴れの舞台に着飾ることよりも「仕事着」を選んだ豊後に、私は彼女の「覚悟」を感じていた。
東家:宮内こずえ(日本プロ麻雀連盟)
南家:一瀬由梨(日本プロ麻雀連盟)
西家:豊後 葵(日本プロ麻雀協会)
北家:岡田紗佳(日本プロ麻雀連盟)
序盤は岡田のペースでゲームが動いた。
東1局1本場。
岡田はこの配牌。
道中で重ねたから勢いよく仕掛け、この仕上がり。
満貫放銃を喫したのは、リーチで手をぶつけていった豊後。
失点はもちろん手痛いのだが、それにしても気になるのが豊後の対局中の姿。
カメラに体がかぶるほどの前傾姿勢と渋い表情。
放送対局に慣れているはずの豊後が、なりふり構わず牌と向き合っている。
緊張のせいか、それとも抱いている「想い」の強さなのか…。
いずれにしても、私たちが麻雀遊戯王で観ている豊後葵の姿ではない。
豊後の想いが牌に届いたのは東3局。
この配牌からテンパイまでのルートは一直線。
手元にやってきたドラのも迷うことなくツモ切りし、
導かれるようにタンヤオのテンパイを果たす。
カンに受けるか、シャンポンに受けるか。
ヤミテンなのかリーチなのか。
豊後、選択の時。
豊後はとのシャンポンでリーチを放つ選択をした。
もしも、場に1枚切れているに嫌気してシャンポンにとらなければ… あるいはリーチに踏み切れずヤミテンを選んでいたならば。
この適時打は生まれなかった!
豊後、劣勢を一気に挽回する一発ツモで4,000オールを成就させて戦線に復帰。
しかし、豊後はこの険しい表情。
和了の喜びなど表情に出すことなく、ぐっと顎を引いたままだ。
「9年前に『豊後無双』と呼ばれる場面を作ったきり、これまで何も残してこなかったのに、またこうして呼んでいただけて皆さんに感謝している。」