対局後、涙ながらに語ったように、この舞台への想いは人一倍強い。
9年前の、あの輝きをもう一度。
豊後の見据える場所は、まだ先にある。
しかし、最強位に対する想いを強くする者は豊後だけではない。
南3局1本場。ドラは。
6巡目、純白の牌奏者が軽やかにリーチを放つ。
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思い起こせば、2021年のファイナル決勝卓。
宮内はオーラスまで、世界で一番最強位に近い場所にいた。
しかし、右手がかからんとしていた玉座は、瀬戸熊直樹が成就させた執念の塊のような倍満和了で露と消えた。
最初から届かないと諦めてしまえるようなものであれば、それはそれで良いのかもしれない。
しかし、宮内の眼前にそれは確かにあった。
数巡を過ぎれば手中に収まっていたはずのタイトルは、寸前でさらわれてしまった。
最強位になれば、翌年のファイナルへシードされる。
しかし、最強位になれなかったファイナリストに与えられるものは何もない。
翌年、どこかの場面でオファーされることもあるかもしれないが、基本的に約束されているものは何もないのだ。
その落差。
宮内は骨身に染みていることだろう。
だからこそ、タイトルを焦がれる想い… いや、最強位を愛おしく思う気持ちは人一倍のはず。
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3番手を走る宮内。
ターゲットの2番手である豊後まで7,600点差。
前局のリーチ供託が1本乗っていてツモるとほぼ並び、裏ドラ次第では逆転してオーラスを迎えられる。
さらに宮内に追い風。
をアンカン。
新ドラはで乗らなかったものの、他家は宮内に対してさらに抵抗が難しくなった。
心中穏やかでない2番手の豊後。
なんとか執念のテンパイを入れる。
宮内のリーチをかわすことができたらかなりの優位を築くことができる一方、リーチに飛び込めばTHE ENDの結末まで見える勝負どころ。
豊後のこの表情から察するに、行くも地獄、退くも地獄といったところか。
むしろ退きたいのかもしれないが、どのトイツにも手をかけることは許されない状況。
手の内でが暗刻になった際も、「通せ!」と言わんばかりに想いを乗せて河へ打ち込んでいった。
宮内の想いが強いか、あるいは豊後がそれを上回るか。
その決着は…
宮内だ!
をツモるも裏ドラは乗らず、1,300−2,600の1本場。
これで宮内が2番手に浮上。
豊後との差は1,600点と僅差ながら逆転してオーラスを迎えた。
南4局。ドラは。
宮内、豊後の和了競争となった今局だったが、ドラがということもあって豊後の条件が近いようで遠い。
宮内は特急券のがトイツであるのに対し、
豊後も自風のがトイツで入るも、宮内と持ち合っていて機能しない。
仮にが鳴けたとしてもどこかでもう一役作らなくてはならないが、チャンタやホンイツに向かうにしても、その道は果てしない。
両者のスタートラインは見た目よりも大きな差があった。
跳満条件の一瀬から打ち出されたを仕掛けた宮内。
ここで勝負あり。