新時代の幕開け!
純朴な青年桑田憲汰が掴んだ
栄光の玉座
【決勝卓】担当記者:ZERO/沖中祐也 2023年12月10日(日)
あれは9月初旬のこと。
私はうだるように暑かった最強戦プロ予選に参加していた。
1/2のトーナメントだったが、勝って、勝って、その次くらいに負けた。
もう4~5回勝った先に、まもなく始まるファイナルテーブルは存在する。
たった4~5回か、4~5回も… か。
モニターに映るその場所は、手を伸ばせば届きそうなくらいに近いようで、本当に存在するのか疑わしいくらいには遠く感じる。
もう12月だと言うのにあの悔しかった負けを思い出すほどに暑い。
そんな週末に、私を含む多くの麻雀打ちの「負け」を積み重ねた先にある、唯一の勝者を決める戦いが始まった。
ここ数年の最強戦は、多井、瀬戸熊、そしてこの男を中心に回っていると言って過言ではない。
3年前の最強位であり、2年連続のファイナリストとなる鈴木大介。
漫画家の片山まさゆきさんは語る。
「完全情報ゲームの将棋と違い、麻雀は不完全情報ゲーム。だから棋士の方は守備型の人が多い。だけどあの人は別。恐ろしいくらいに踏み込んでくる。そして強い。」
だが、その鈴木大介の二代目とまで称される男がこのファイナルテーブルには存在したのだ。
香川から来た28歳、桑田憲汰(くわだけんた)である。
赤木剛憲を彷彿させるガタイから繰り出されるゴリプッシュは、幾度となく対戦相手と視聴者を驚かせてきたのだ。
東1局 驚愕のドラ切り
ファイナルテーブルでもその常識外の雀風が変わることはなかった。
桑田はここからドラのを切った。
なんでこんなブレブレの画像なのかと言うと、をツモってきた瞬間にこのドラをつまんでいたのだ。
牌図で見てみよう。
親とはいえ、カンチャン3つの2シャンテンである。
2人から仕掛けが入っており、ロンはもちろんポンと言われるのも嫌な状況。
普通はイッツーを残してあたりを切っていくのではないか。
なんというふてぶてしさ。
正誤はわからないが、少なくともファイナルの舞台で自分の麻雀が打てていることは確かである。
目一杯構えたおかげで
2巡後にテンパイしてリーチ!
も、宣言牌のが先制リーチの和久津につかまった。
リーチ・タンヤオ・ピンフの3900。
ただアガった和久津の表情が冴えない。
だったら裏ドラかつ三色がついてハネマンだったところを、3900止まりになってしまった。
桑田の押しによって、最低打点に抑え込まれた格好になったのだ。
犬に噛まれたときは引っこ抜こうとすると余計傷が酷くなり、逆に押し込むと犬が苦しくなってすぐに吐き出してくれる… というようなウンチクを思い出した。
東2局 アマゾネス唯一の後悔
それにしてもアガった和久津があまりにもかっこいい。
卓に入り込み目をギラつかせるその様は、まさに野獣そのもの。
打牌は小気味よく、そして強い。
この屈強な男3人に囲まれても、全く物怖じしないどころか、絶対勝つんだという意思を感じさせる。
そんな和久津の手牌。
和久津はここから、たろう(下家)から打たれたをポンしてを切った。
いわゆる「速度を合わせた」格好だ。
絶好のイーシャンテンとはいえ、桑田から高そうな仕掛けが入っている。
さらに言うととが2枚ずつ打たれており、どちらかもう1枚打たれると途端に苦しくなる。