逆にここでテンパイを入れておけば、桑田の仕掛けを警戒した他家からは拾いやすい。
だが、ポンして打ち出したが…
たろうのタンヤオ・ドラドラに捕まる。
その瞬間、和久津が悔しそうに顔を伏せた。
鳴くかどうか紙一重の選択。
しかし放銃という結果を目の前にすると、「焦っちゃったかな」という思いに駆られてしまう。
逆にたろうの待ち取りがうまくいったとも言える。
ここからドラのとのシャンポン待ちに受けず、1枚切れのカンに受けたのだ。
やはり桑田の仕掛けを警戒した打ち手からがこぼれやすいことを意識したか。
いや、こぼれやすいという点においてはも同じだが、という部分は下に伸びやすいことが決め手になったのだろう。
たろうは過去に最強位になっている。
もう20年前の話になるものの、そのときは決勝戦のオーラスで四暗刻をツモって逆転優勝するという劇的なものだった。
今年の最強戦でも
オーラスに四暗刻をツモってファイナル行きを決めたのは、なにかしらの因果を感じる。
私はコバゴーじゃない。
以降、和久津になかなか手が入らないまま、場は膠着状態に入ったのであった。
南1局 最速テーブル
速い… 歴代の決勝戦の中でも群を抜いて速い。
誰かの打牌が速いと釣られてみんなが速くなるのは麻雀あるあるだが、このファイナルテーブルは4人とも選択が速く、加速度的に速度は上がっていった。
その中で南1局、親の桑田の手が珍しく止まる。
何切るに出てきそうな牌姿である。
頭を固定して→と切り出すか、かを切ってソウズの連続形を活かすか。
ここは間違えられない… そう感じた桑田が切ったのはだった。
やはりソウズの連続形が強い。
をツモってもノベタンリーチが打てるのが大きい。
また567・678のどちらを残すかだが、外側の678の方を残すのが普通である。
だが今回はを切って567を残すことでツモでドラが出ていかないし
ツモツモはドラなので充分高く、ツモは567の三色になり、高打点を分散させた構えだ。またとでは河を強さが大きく違う上、としておくことにより一手でイーペーコーにもなる。
唯一の裏目となるのは…
、特にをツモってきたときである。
「裏目は受け入れなければいい」
と言わんばかりに桑田はこのを音速でツモ切り、テンパイを拒否。
を重ねてのフリテンリーチを打つと
「4000オール」
少し訛った申告で親満をゲットした。
この一撃でトップ目に立つもすぐに
たろうの3000/6000が飛び出し、桑田は原点に戻る。
ここ数年の決勝はずっとこうだ。
誰かが抜け出そうとすると誰かが咎めてくる。
それぞれの思いがぶつかり合い、そして必ず決着のときがやってくる。
決断のリーチ
こうして、開始からわずか30分でオーラスを迎えたのだ。
点棒状況と桑田の配牌は以下の通り。
桑田はたろうと7200点差であり、マンガン出アガリで届く。
そしてお誂え向きの配牌だ。