西原理恵子 & 山崎一夫 博打は一本!泣くならやるな!




博打は一本
泣くんならやるな!

私が雇われマスターをやっていた雀荘のバラ打ちの常連は、けっこう羽振りのいい人が多かったです。

不動産業者や競馬のノミ屋や一人親方の建設業者だったり、営業部隊のボスだったり。

「日本の自動販売機の営業フォーマットは俺が作った」

と豪語する人もいました。

 

一見立派に聞こえますが、実態はたいして儲からない立地の人にも、自動販売機をローンで買わせて、そっちで販売者だけ儲けるというフォーマットです。

中には高齢者の年金目当てでローンを組ませて、自販機の電気代を払ったら契約者は赤字になるという契約などもあったそうです。

アコギに稼いだお金で、パチンコ、麻雀、競馬、競輪と何でも手を出していました。
そういう人は、だいたい酒も飲むし女性と遊ぶお金も使います。

「俺は、飲む打つ買うさえしなければ、ビルがいくつも建ってるんだけどな」

実際それくらい稼いでいたようですが、飲む打つ買うの道楽が、稼ぐ原動力だったかもしれませんからね。

 

一方マジメな麻雀打ちもいました。

近くに住んでるシンさんという三十代の人で、サシ馬に誘われても乗らずに、コツコツと勝ちを重ねているようでした。

「俺は遠慮しとくよ、その代り2人で大きく握ればいいじゃない」

実は2人だけの分的的なサシ馬があると、参加してない人は2人の思惑を利用して有利なゲーム回しができます。

たとえば自分がトップ目で、サシ馬の2人が2着3着だったとします。

その場合、彼らがトップ狙いをするよりも、サシ馬に勝ったほうが得するように仕向けるんです。

どちらかが仕掛けたら、もう一方に甘い牌を泣かせて、早めに決着するように仕向けます。 相手のベターが自分のベストになるワケです。

サシ馬が大きいほど、効果的なやり方です。

シンさんは麻雀好きでしたが、将来に備えてちゃんと貯金もしていたようです。
しばらく麻雀を打ちに来ないと思ったら、近くの空き店舗を自分で改造していました。

「焼き肉屋をやるんで、トイレを和式から洋式に改造してるんだ」

ツルハシで床土を掘り返して、配管も付け直して、床のコンクリート打ちもも自分でやってました。

そうやって、徹底的に投資金額を落として、なおかつお客さんが自分が使いやすい設備に改造するんだから立派です。

投下資本が少なければ少ないほど、元手が早く回収できますから。

それと、もし最初から営業不振に陥った場合でも、なるべく多く現金を手もとに残しておけば、黒字になるまで耐えられます。

せっかくの始めた商売なのに、撤退を余儀なくされて悔しいのは、

「もうちょっと頑張ればなんとかなりそうだけど、資金が続かない」

と言う状況です。

これは、雀荘経営でも同じです。
シンさんの節約ぶりはそれだけじゃない。

大きな枝肉を買って、専用の包丁で、自分でさばくんです。

たいへんな力仕事だそうですが、これで格段に肉のコストが下がり、なおかつお客さんの好みに合わせた肉が取れるんです。

「シンさん、俺用の例の特注カルビ頼むわ」

なんて常連さんもいました。

シンさんは美味しい焼き肉を安い価格で提供し、お店は大繁盛でした。

しかも奥さんといっしょに良く働いていたので、人件費も少なくて、すぐに儲かるようになったんです。

おしゃれな店や
綺麗な仕事ほど儲からない?

シンさんのお店は繁盛してましたが、本人は仕入れから深夜までの連日労働で、一時体調を崩したりするなど、かなり疲れが溜まってたようでした。

それでも、奥さんと協力して数年間はがんばって稼いでいたんですが、やがて焼き肉屋を閉店して、今度はカフェバーに衣替えしたんです。

「おれ、元もとはこういう店をやりたかったんだよね。手の匂いが脂と血だったのが、コーヒーに変わった」

泥臭い仕事から、おしゃれな趣味の仕事へ変えるパターンは、普通失敗することが多いんですが、シンさんの場合は当てはまりませんでした。

コーヒーや酒の仕入れは、枝肉を自分でさばくほどの工夫の余地が少ないので、焼き肉屋よりは稼ぎは下がったようです。

でも、自分のやりたい店ができるのはいいことですよね。

シンさんは私より少し年上でしたが、その店の稼ぎで子供たちを育て上げ、小さいながらもマンション一棟を購入したんだからすごいです。

私なんか、今も賃貸暮らしで年金無しで税務署に追われてて、トホホなのに。

自営業者としては大成功なんですが、残念ながら、そのカフェバーはバブル経済が終わってから数年後に閉店してしまいました。

本人の話しでは、まだ儲かってたけど、身体の調子もまた悪くなって来たし、子供も成人したし、自分の老後は持ちマンションの一部を学生に貸せばなんとかなりそうだし、ということでした。

閉店後は会っていなかったんですが、久しぶりに街で奥さんと遭遇しました。

「マンション買って、やっと楽ができると思ってたけど、不動産価格の下落で、思ったほど楽じゃないですよ」

そうボヤいてたました。

 

でも副業のマンション経営の不振がカバーできるほど、本業で稼いでおいたのは立派だと思います。

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