園田賢、手牌だけでなく
人の思考までをも読み切った魔術師
【決勝卓】担当記者:東川亮 2024年8月4日(日)
麻雀において、「読み」を求められるタイミングは、実はそれほど頻繁にあるわけではない。
まずは手牌をアガリに結びつけるための「手組み」や、攻めと守りの判断を見極める「押し引き」などを学ぶほうが、強くなるためには重要だろう。
ただ、そうしたベースの部分を磨き上げた強者同士の戦いにおいては、最後の最後、わずかな差が勝敗を分ける。
その差を生む要素になるのが「読み」であり、それはいわば、強者が強者に勝つために必要な技術だ。
麻雀最強戦2024「読みの神髄」決勝卓は、松本吉弘・二階堂亜樹・園田賢・白鳥翔というMリーガー4名の対決。そのラストは、まさしく冠名の「読み」を駆使して勝敗を決した、最強戦史に残る名場面となった。
序盤は細かな駆け引き、中盤からは高打点の応酬となった対局の中で、一つ大きな動きがあったのが、南2局。
4巡目、園田が場風のをポン。点数状況を見ると、松本がトップ目で園田が微差の2番手で、園田の立場からすれば、この状況で最も避けたいのは親の松本の連荘である。手の内にメンツはないが、まずは役を確定させ、アガリに向かった。
その後、園田はさらに仕掛けを入れながら手を進め、待ちテンパイ。
このとき、亜樹の手にはが飛び出しかねない形で残っていたが、
そのを暗刻にしてテンパイ、リーチをかける。リーチドラ1でツモれば満貫から、劣勢の亜樹としては、この手を逆襲の狼煙としたい。
さらに松本もドラ含みのリャンメン待ちリーチで参戦。
直後、亜樹が園田の待ちでもあるを引き、暗槓で握りつぶすと、
新ドラが、亜樹の手はリーチドラ4のハネ満からという超大物手に化けた。
こうなると苦しいのは園田。待ちの片割れが消えたところで、シャンポン待ちに変化させられるツモ。
ここは切りで待ちを変える。は親の松本の現物、を切って暗槓の亜樹にも切りやすい牌だ。
だが、直後に松本からツモ切られる。を押せていればアガっていた牌。
そしてつかむ、2人に通っていない。
ここで園田が時間を取って考える。押すか、押さないか、押さないなら何を切るか。
ひねり出した答えは、受けの切りだった。押さなかった理由は、松本に対してが危険な牌だから。そして切りになったのは、を切っている松本にリャンメンで当たらない牌だから、という理由だ。亜樹には通っていないが松本に放銃するよりマシ、そして通ればもう1巡しのげる、ということも大きかっただろう。
必死の形相で松本がツモ切る。
。
園田は、鳴けば単騎待ちでテンパイ復活できた。しかし、その後はリーチに対してノーガードとなってしまう。巡目も深く、流局を願ったが・・・。
次巡、が松本の手元で跳ねた。松本は園田の対面、園田がをポンしていれば、自身の手元に来る牌だった。
裏裏で4000オール、これで松本が一歩抜け出す。
アガリのルートを逃し、ライバルにツモられる。胸中はいかばかりか。しかし園田は折れない。
次局、待ちリーチをタンヤオがつく高目でツモり、リーチツモタンヤオピンフ裏裏の3100-6100。このアガリで園田が松本を微差ながら再逆転。
南3局では親番の亜樹が一度は4000オールをツモるも後が続かず、優勝の行方はほぼ園田と松本に絞られた形でオーラスを迎えることとなる。
南4局は松本が逆転のテンパイを入れるも、園田が1500点のアガリで点差を広げた。ただ、ちょうど4000点差は、松本1人テンパイか園田1人ノーテンのときは同点で並んで試合終了、「試合終了時同点は上家有利」という麻雀最強戦のルールによって、松本の勝ちとなる。
そのため、園田は手を組まなければならない。亜樹の第1打は解消したい急所の一つ、いきなりのチーで手を組みに行く。
最初のテンパイは園田。待ちは決していいとは言えないが、この局面ではテンパイと宣言できることが大きい。
松本は中盤の段階でこの形。まとまった形の1シャンテンだが、受けは園田がポン、も暗刻で持っており、かなり厳しい状況となっている。