「一局」集中!
近藤誠一、魂の大芝居
文・渡邉浩史郎【金曜担当ライター】2023年3月10日
第1試合
東家:岡田紗佳(KADOKAWAサクラナイツ)
南家:二階堂亜樹(EX風林火山)
西家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
北家:近藤誠一(セガサミーフェニックス)
そのトップインタビューは、さすがに何かしらの釈明から始まるだろう。
そう誰もが考えていた。
しかしその男はこともなげに、「よっぽどマシな判断」、つまり自らの意思での選択と言ってのけた。
近藤誠一、その人。麻雀において、ファンに対して、嘘偽りを使うような人間では到底ない。
いったい今日の卓上で何が起こったのか。その一局をご覧いただこう。
【東1局】
事件は開局早々に起こった。
北家近藤の手牌。を重ねてチャンタや三色が見える。
ここはいったん切りとした。
次巡、引いてきたのは裏目気味の。
とはいえ、まだ234の三色の目もある。を切って、下の三色。本線は消さない。
岡田から切られたは形的にも鳴きにくいため、スルー。そして引き入れたのは!
徐々に形が出来ていく。
引き戻した。ここは強気にチャンタ三色を見てのツモ切りかと思われたが……
ここで近藤の選択は。
チャンタとして見ても三色として見ても、が急所の手牌。
そのが一枚切られてしまったため、ここはをポンしての躱し手も考慮に入れたか。
を引いて、微妙にかみ合っていないツモ。
ここは不自由なペンを払っていく。シャンポン部分は目に見えて残り一枚のフリテンだが、のポンが出来るし、マンズの下を引けば両面やイーペーコーの形が残る。
こうして両面が先に埋まってしまってもを切ることで、234の三色を見る聴牌外しができる。
ここは誰が見てもを切る一手だろう。
「リーチ」
あまりに唐突に、その声は卓上に響き渡り、
近藤の切った牌は、横に置かれていた。
それは余りに理を超えている。麻雀漫画ですら見たことがない。
絶対にトップが必要な条件戦だから?
同卓者は守備派の亜樹・ボーダー争いに巻き込まれたくない岡田・余計な点棒は減らしたくない寿人。このチーム事情と人読みを鑑みて?
何を書いても陳腐にしか聞こえないだろう。
この結果を見せられては。
一世一代の、一心不乱の、乾坤一擲の、その一発ツモは、全人類を震撼させた。
正直筆者自身、この局について何も理解できていない。そんな中で、この局のことを書くべきか、迷い続けた。
実は近藤がインタビューの時に勘違いしていたのではないか。そうであったほうが、幾分か気が楽だ。
しかし対局後の楽屋裏動画や近藤のTwitterを確認しても、そういった内容のものは見つからなかった。
つまり、こういったことを平気でやってのけるのだ。近藤誠一、その黄金の左腕は。
であればこの局のことを書かずに近藤のトップについて書くことは、それこそ近藤とそのファンに対する冒涜であろう。
唯一無二のアガリで、一点突破を果たした近藤。
そのトップがチームにもたらしたものは余りにも大きい。一日トータルで大きな増加とはならなかったが、フェニックスは残り6戦、全て雷電との直接対決を控えている。